「年金カット法案」で、国民年金は年4万円、厚生年金は年14万円も減る?

10月12日の予算委員会で、政府が臨時国会で成立を図ろうとしている年金給付抑制法案(いわゆる「年金カット法案」)について質問しました。 

この法案、安倍総理にとってよほど都合が悪いのでしょう。10月3日の質疑の際、私は、法案提出時に予定されたとおり低所得年金者対策を実施すべきと建設的な提案をしたのに、その内容を曲解し、その後の衆参予算委員会の審議でも、批判めいた発言を繰り返していました。

特に、10月4日の井坂議員への答弁の中で、私が平成33年の法施行を知らないで発言したと、根も葉もないことを断言されたので、発言の取り消しを求めましたが、総理は言い訳に終始して、一向に認めようとしませんでした。

国民生活にとって大切な年金の議論で、事実の確認もせず、他人の誹謗中傷に終始する総理大臣の姿を見て、心配になったのは私だけではないはずです。

冷静かつ建設的な議論を行っていただくようお願いして本題に入りました。

まず、前回同様、アベノミクスの下でも、高齢者の生活保護世帯が増加の一途をたどっていること、今年の3月には、65歳以上の高齢者世帯が全体の半数を超えたことを指摘しました。

あわせて、医療扶助や住宅扶助を含んだ生活保護の一人あたりの平均額(事業費ベース)が、約14.1万円なのに対して、国民年金の平均支給額は約5.4万円、厚生年金が14.8万円(2014年度)であることも示しました。

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しかも、28年度(2016年度)の高齢者白書によれば、年金生活者(世帯)の6割は、他の収入がなく「年金収入のみ」で生活し、年金生活者の5~6人に1人は「基礎年金のみ」で生活をしています。

こうした状況の下で、物価が上がるときにまで年金を減らす「新ルール」を導入したら、結果として、生活保護が増えるだけになる可能性があります。年金の最低保障機能は維持しなくてはなりません。
そこで、今回の「新ルール」の導入で、具体的にどのくらい年金が減るのか、試算を示して欲しいと安倍総理に要請しました。私たち自身も、厚生労働省のデータなどを基に計算し、今回の「新ルール」が10年前に導入されていたとしたら、過去10年間の年金額は、5.2%も減っていたことを明らかにしました。

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*この資料は井坂信彦議員作成

私は今回、これを2014年度のモデルケースの年金額(国民年金6.4万円、厚生年金22.7万円)に当てはめて計算してみました。すると、

国民年金で年間約4.0万円(月3.300円)

厚生年金で年間約14.2万円(月11.800円)

の減額になることが分かりました。

正直、こんなに減るとは思いませんでした。自民党側からも「それは10年間での数字だろう」とヤジが飛んだくらい大きな減少額です。 

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もちろん今後の経済状況で変わり得る数字です。しかし、大きな減額となる可能性がある以上、政府としても公式の影響試算を出すべきだと安倍総理に迫りました。

しかし、安倍総理は、塩崎大臣を呼んでくれの一点張りで全く答えようとしません。前回の質疑で、すでに塩崎大臣には同じ質問をしていますし、私は細かい数字ではなく総理の基本姿勢を聞きたかったのです。もちろん、事前に質問通告もしてあります。

それなのに総理はまともに質問に答えず、逃げに終始しました。意図的なサボタージュだと言わざるを得ません。残念です。

ちなみに、民主党政権時代に年金の「特例水準」を見直した際には、7兆円の「払い過ぎ」があり、2.5%分の減額が必要になると一定の試算を示しました。

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国民に負担を求めたり、給付を削るようなときには影響試算を示すべきです。全く試算も出さずに、わずか2か月の国会で「年金カット法案」を急いで通すことは許されません。

しかも、年金受給資格を25年から10年に短縮して無年金者を救う法案と抱きあわせにして通そうとしていますが、60万人の無年金者対策を人質に取るような極めて姑息な手段です。

引き続き「年金カット法案」についての議論を深めていきたいと思います。


編集部より:この記事は、衆議院議員・玉木雄一郎氏の公式ブログ 2016年10月13日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はたまき雄一郎ブログをご覧ください。