トランプは口は悪いが、人心掌握術に長けていた名優だったかも知れない

口が悪く、品性も下劣極まりない人物だな、などと思っていたが、アメリカの国民がトランプを選んだ、という厳然たる事実は否定しようがない。

未だトランプを選んだアメリカの国民を褒めたたえる気にはなれないが、アメリカの国民は正しい選択をしたのだと思い込んで、トランプを理解する努力はした方がいいだろう。

意外や意外、頭を切り替えると、トランプはやはり大変な人だということになる。
まったくの泡沫がアメリカの大統領選挙に勝利するまでの軌跡を追ってみると、トランプが大変な天才のように見えてくる。

トランプをビートたけしになぞらえている人がいたが、トランプは軍人でも生粋の政治家でもないが、経済人としてもある種のタレントとしても一世を風靡するに足る異能の持ち主だったことが分かってくる。

トランプほど逆境に強い人は珍しい。

インテリ層には受け容れられにくいだろうが、大衆には歓迎されそうな独特の弁舌とパフォーマンスで、人心掌握術に長けていたということだろう。

蓋を開けてみれば、ヒラリー・クリントンの陣営には熱狂的支持者は少なかったが、トランプの陣営には強烈な熱狂的支持者がいた、ということのようである。

甲乙の争いではなく丙丁の争いだ、などと冷ややかに見ていた人たちが多かったが、どうやらトランプは、ヒールにしてヒーローという難しい役を演じていた素晴らしい役者だった、ということになりそうである。

トランプは、口は悪いが、どこまで本気だったか分からないぞ、と思わせるようなところがある。
トランプ名優説が正しければ、トランプは大統領に就任すれば案外いい大統領になるかも知れない。

大統領選挙の勝利が確実になった時点で、トランプは、すべての国民のために働く、と演説したそうだ。
いつもの毒舌がどこかに飛んで行って、如何にも聡明な政治家のような口ぶりである。
当選が確定した後、早速主要国の首相に自ら電話した、というのもいい。

譲れない公約もあるだろうが、案外トランプは過去の発言には拘泥しないかも知れない。

上手な役者は、TPOを心得ているものである。
トランプがいい役者であれば、そんなに心配しなくてもいい。

まあ、あくまで、願望を籠めた、私の希望的観測に過ぎないが。


編集部より:この記事は、弁護士・元衆議院議員、早川忠孝氏のブログ 2016年11月11日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は早川氏の公式ブログ「早川忠孝の一念発起・日々新たに」をご覧ください。