ランバダの思い出

常見 陽平

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「ランバダ」を歌っていたロアラ・ブラスさんが亡くなった。焼けた車内で遺体が見つかるという、衝撃的な死だった。

「ランバダ」のロアラ・ブラスさん死去=焼けた車内で発見―ブラジル(時事通信) – Yahoo!ニュース

ここでヒット曲というか、作品の「売り方」「売れ方」について考えてみたいと思う。私は「ランバダ」は楽曲も演奏も、極めて優れていたように思う。特にロアラ・ブラスさんの伸びやかで、情熱的で、やや憂いを感じる歌声が好きだった。


私が「ランダバ」を知ったのは、中学時代にこっそり見ていた、深夜番組「11PM」か「トゥナイト」だったように思う。要するに男女が腰を押し付け、体をくゆらせるあのダンスが話題となり。思春期の私たちにとっては衝撃的すぎた。

深夜番組でランバダが紹介された後、我が母校、札幌市立藤野中学校では、休み時間の廊下や、放課後の男子更衣室で、男子同士で腰を押し付け、ダンスする奴らが大量に現れたのだった。ロアラ・ブラスさんの訃報に接し、私も思わず自宅で一人でエアランバダを踊ってしまった。それが、見事に踊れたのだ。歌も覚えている。体に染み付いているのだ。「これは、録画して、Facebookにアップするべきではないか」と妻に相談すると、「やめなさい」と言われた。実に残念である。

もっとも、最初はこのセクシーなダンスに注目したのだが、「ランバダ」は極めて優れた楽曲だった。ラテンの魅力を全世界に紹介した曲の一つだと思う。我が国においても、だ。彼らがセクシーさを最初にどれだけ意図的にアピールしていたかはわからない。ただ、最初はそのダンスに注目が集まりつつも、結果としては楽曲と演奏の素晴らしさに世界が注目したのではないか、と。一発屋という声もあるだろうが、一発があるだけえらい。いや、その一発というのはなかなか異様な売れ行きだったりもするわけで。他にも良い楽曲があったのだろうな、ほぼ聴いていないけど。

でも、何かキワモノっぽいものに注目させて、自分たちのやりたいことをぶっこんだり、スキルをアピールする手はあって。コミックバンド、キワモノと言われるバンドって実際は、凄まじいスキルを持っていたり。私の世代でいうと、筋肉少女帯とか、聖飢魔II、爆風スランプなんかがそうだ。小室哲哉とダウンタウンのハマちゃんがコラボした曲なども、実は日本において、いや世界でも最も売れた「ジャングル」の曲だったりする。サザン・オールスターズの「勝手にシンドバッド」も「勝手にしやがれ」と「渚のシンドバッド」を混ぜたSEO対策みたいなタイトルで、何を言っているか分からない歌詞だけど、あのはやいビートに日本語を載せる、ラテンのリズムを紹介するという意味では大成功した曲だ。

ちょうど春刊行の2冊の準備をしているのだけど、私がやっていることは、ロック・ミュージシャンや、プロレスラーにはなることができなかったが、私なりのロック、プロレスを文筆で表現するというか。私の文章は、メタルの歌詞であり、リフであり、速弾きであり、そしてチョップであり、ドロップキックであり、バックドロップなのだ。

それにしても、ロアラ・ブラスさんは・・・。衝撃的な登場であり、死であった。下世話な注目をされてしまった曲だったが、いま振り返っても、実にやすらぎを感じる曲である。安らかに眠って欲しい。

合掌。


編集部より:この記事は常見陽平氏のブログ「陽平ドットコム~試みの水平線~」2017年1月20日の記事を転載させていただきました(アイキャッチ画像はカオマのアルバム「La Lambada」より)。転載を快諾いただいた常見氏に心より感謝申し上げます。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。