教育の情報化は授業を受ける子ども目線で!(中)

2017年07月10日 23:00

(上)で紹介した小林史明衆議院議員(自民党)の文化庁報告書に対する疑問を以下に要約する。なお、表は字が小さくて読みにくいが、文化庁資料をもとに作成したので、詳しくはそちらを参照されたい。

1. 遠隔授業について、①配信側に生徒がいる場合(表の二番)と ②いない場合(表の三番)とで扱いが異なる。
2. 対面の授業(表の一番)についても ①紙のコピーを配る「複製」の場合と ②iPadに配る「公衆送信の場合」で扱いが異なる。
3. 現在許諾が必要な1.②および2.②を許諾不要にする代わりに有償とするのが文化庁案だが、わかりにくく、現場のICT導入を阻害するおそれがある。
4. せっかく検討するのなら、これを機に枠のあり方から検討すべきである。

この問題については、6月8日の参議院内閣委員会でも清水貴之議員(日本維新の会)が質問した。清水議員は上記1.②の配信側に生徒がいない同時双方向型の場合(表の3番)は、留意事項でも生徒数が40人以下と人数も限られていることから、著作権の許諾不要にしてもよいのではなどと質問した。これに対し、文化庁の永山裕二審議官は文化審議会著作権分科会での議論を紹介した後、以下のように結んだ。

ただ、この点につきましては、五月二十三日の規制改革推進会議の答申で、「平成二十七年四月から高等学校で解禁された「同時双方向型の遠隔授業」における著作権制度上の課題について検討を行い、必要な措置を講ずる。」という答申が行われておりまして、文化庁といたしましては、この答申を踏まえまして文化審議会で更に審議を行いたいと考えております。

規制改革推進に関する第1次答申
規制改革推進会議の「規制改革推進に関する第1次答申」(写真は規制改革推進会議大田弘子議長から安倍総理に手渡される答申)は遠隔教育について以下の内容を盛り込んだ(44-45頁)。

高等学校の遠隔教育における著作権法上の問題の解決
【平成 29 年度検討・結論・措置】
学校教育の授業で演奏や資料の使用を行う場合、一般に著作権法(昭和 45 年法律第 48 号)上の許諾は不要とされているが、遠隔授業の場合、演奏や資料送信が著作権法上「不特定/多数者への送信」とみなされ、著作権者の許諾が必要とされることがある。現在、「合同授業」(両方の教室に教員と生徒が存在)では、著作権法上の特例措置(第 35 条第2項)が設けられており、教室での対面授業と同様に、著作権者の許諾が不要とされる(補償も不要)。一方、平成 27 年4月から高等学校で解禁された「同時双方向型の遠隔授業」(配信側には教員のみで生徒はいない)では、著作権法上の措置がとられておらず、著作権者の許諾が原則必要とされており、音楽の授業などの制約要因になっていると考えられる。したがって、平成 27 年4月から高等学校で解禁された「同時双方向型の遠隔授業」における著作権制度上の課題について検討を行い、必要な措置を講ずる。

この項目は6月9日、閣議決定された今年度の「規制改革実施計画」にも盛り込まれた。

答申に先立つ5月11日、規制改革推進会議の原英史委員は、自民党本部で開催されたIT戦略特命委員会(委員長 平井卓也衆議院議員、自民党)で、4月に同会議が提出した「ICTと遠隔教育:規制改革推進会議の意見書」について説明した。

Win Win の解決方法

自民党IT戦略特命委員会で司会を務めた福田峰之議員は、文科省関係者に「授業を受ける子どもたちの立場に立て」と指摘した。子ども目線に立てば、たとえば、上表の真ん中の「著作物の利用形態」に「※異時は予習復習等」とある。家で予習復習ができる異時送信は、教室での授業についていけない子どもにとって救いの神となる。現に落ちこぼれる生徒を減らしている海外での成功例もある。

慶應大SFC研究所プラットフォームデザインラボラトリーは、約7年の高校での実証を通じて設計した遠隔授業モデルを全国の教育委員会や高等学校へ公開して、遠隔授業の普及を支援している。同ラボラトリーの梅嶋真樹高校遠隔授業研究リーダーは、2016年11月の規制改革推進会議第5回投資等ワーキング・グループ説明資料で 著作権法上、対⾯授業では出来るのに遠隔授業では出来ない内容が数多くある点を指摘した上で、次のように要望した(11頁)。

著作権法が法35条の精神に従い、遠隔授業へ対応してくれることを希望します。「ドメイン指定」などのネットワーク技術と組み合わせば、インターネット上で著作権者の権利を守りつつ遠隔授業を活性化させる制度設計が可能になると考えます。

このように著作権者の権利を守りつつ遠隔授業を活用できる技術的解決方法があるのであれば、その道を模索するのが子ども目線に立ったICT活用教育といえるのではなかろうか。(つづく)

城所岩生(国際大学客員教授・米国弁護士)

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