近代化の遅れが生んだ角界の不祥事

2017年12月04日 06:00

Wikipedia:編集部

モンゴル力士を協会理事に

大相撲は社会常識から、隔絶された世界になっています。日本古来からの奉納相撲を起源とし、いわゆる国技の地位を与えられて、あぐらをかいてきたせいなのか、本気で改革や近代化の努力に取り組んできませんでした。近代化には国際化、つまりモンゴル出身力士を協会の組織、機構に理事として迎え入れることも含みます。

多くのプロスポーツでも外国人監督が少なくないし、一般企業でも外国人役員が大勢、誕生しています。かれらとの同化が不可欠になっているのに、相撲界の運営体制だけが例外というわけにはいかないでしょう。他のスポーツ団体、企業のやり方を研究し、近代的な体制に脱皮する必要があります。

国技、伝統、相撲道にこだわるあまり、相撲もプロスポーツ・ビジネスであるとの意識が育ってこなかったように思います。改革するいい機会です。協会理事長が力士出身でなければならない理由もありません。

とにかく、暴力、暴行の類は根絶が第一歩ですね。一般常識から隔絶した行動は、乱暴な扱いもする稽古と、暴力・暴行の区別のなさです。稽古で投げ倒したり、張り手で突き倒しても、大けがさえなければ、暴力とか暴行の扱いは受けません。同じようなことを稽古場以外でやって、怪我を負わせれば、警察沙汰になります。格闘技の世界ですから、その境界線が分からなくなっているのでしょう。

山のようにある暴力行為

力士を個人的に支援している知人の相撲ファンの話では、「警察沙汰になってもおかしくないような暴行、暴力が山のようにあり、ひどい目にあわされているのに、下位力士は沈黙を守らざるをえない。体に傷を負うほどひどい扱いを受けたうえ、親方から部屋を追い出された例を見ている」と、指摘しています。そんな状態が見逃されてきたのは、相撲協会の閉鎖的な体質に原因があります。

貴乃花のかたくなな態度は「警察に届け出て捜査してもらわないと、うやむやにされるという、これまでの経験があるに違いない」と、このファンは推測しています。「相撲協会に報告しても、表ざたにならず、結局、相撲界の悪しき慣行が見逃されてきた」と。

今回の事件をきっかけとして、相撲協会は力士全員を対象にした全面的な調査をすべきです。さすがに土俵外の暴行事件は放置できず、日馬富士の事情聴取、引退、立件(書類送検)となります。同席した白鳳らに対する厳重注意などで幕引きとしてはいけません。

力士出身の理事を減らせ

相撲協会の組織、機構が不祥事を黙認しがちな体質になっており、その改革は必要です。協会の理事(10ないし15人)は年寄りから選ばれる理事、外部から選ばれる理事3人の構成です。特に内部理事は力士出身で、規模も予算も巨大な団体を運営するのにふさわしいの能力を備えた人材が揃っていると、いえるのでしょうか。外部理事が非常勤だとすると、体裁だけ整えたということになります。

身内ばかりで固めてた組織では、自分たちの既得権益の死守、維持が優先され、抜本的な改革に取り組めるか疑問です。経営能力、組織管理能力、コンプライアンス能力が揃っていなければなりません。昔、相撲が強かったということを条件に理事(一般の会社の役員)を決めるのは間違っています。

モンゴル出身の力士は在籍22人、うち関取12人という大きな勢力です。モンゴル力士なしに、日本の大相撲は存在できません。出身国別にみても、理事構成がゆがんでいます。白鳳が「日馬富士と貴ノ岩を再び土俵に上げたい」といったり、明らかに場違いである万歳三唱をしたりしたのは、相撲協会に鬱屈した気持ちを抱いている結果でしょうか。白鳳の出過ぎた行動を批判するなら、同時に相撲協会の在り方も考え直してみるべきです。

理事長の諮問機関で、横綱を推挙する横綱審議会も、構成が妙ですね。経営不振の全国紙の元社長、東京芸大学長、音楽著作権協会の関係者、証券会社の経営者、その他です。相撲界の経営、運営、振興、力士教育にきちんとした見識を持ち合わせているのでしょうか。無難な人をお飾りとして迎えていると思います。

大相撲は慣例として国技といっています。国技と決めた法令があるわけでもなく、厳密な定義もありません。ですから理事や横審メンバーは日本人にこだわることなく、モンゴル出身者を迎えるべきでしょう。今回の事件は、モンゴル出身同士のいさかいのほかに、かれらが日ごろから持ち続けている不満が背景にあります。むしろ協会内部に取り込んでいくのが筋でしょう。

最後に、八百長相撲との関係です。モンゴル力士会、それをベースにした濃厚な人間関係、交流の場があると、疑いの目で見られかねません。勝ち負けを数えても、証拠なんかつかめないでしょうし、日常的にやっているということでもないでしょう。

いざという時に「お前、分かっているだろうな」ということが全くないと、いいきれないでしょう。もちろん日本人力士を含めての話です。今回の事件をきっかけに、相撲界全体の洗い直しをすべきだと思います。


編集部より:このブログは「新聞記者OBが書くニュース物語 中村仁のブログ」2017年12月3日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、中村氏のブログをご覧ください。

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中村 仁
ジャーナリスト、元読売新聞記者

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