国立大学は地域と連携しているのか

2015年に文部科学省は国立大学を三つの類型に分類した。人材育成や地域課題を解決する地域に貢献する取組を中核とする「地域」型の55大学、特色のある分野で教育研究を推進する「特色」型15大学、世界に卓越した教育研究を推進する「世界」型16大学である。

文部科学省の下に置かれた科学技術・学術政策研究所(NISTEP)では、国立大学研究者の発明に基づき出願された特許を網羅的に調査した。調査期間が2012年度までなので三分類化前の状況しかわからないが、「地域」型55大学が地域とどのように連携してきたか読み取れる。

名古屋工業大学、北見工業大学、香川大学などは地域内企業との共同研究が多く、同時に地域内企業との共同特許出願率が高い。茨城大学、琉球大学、福島大学などは地域内企業との共同研究は多いが、それに比べれば地域内企業との共同特許出願率は低い。佐賀大学、山形大学、長岡工業大学などは地域内企業との共同研究が少なく共同特許の出願率も低い。

佐賀大学などは地域内企業との連携を強化しないと「地域」型大学の特徴を失う恐れがある。茨城大学などは共同研究成果の知的財産化に力を入れる必要がある。名古屋工業大学などは他の「地域」型大学の見本となる。

NISTEPの調査報告は佐賀大学について、「佐賀大学には日本で有数の人工関節のセンターがあり、人工関節メーカーとの連携による発明数が圧倒している」ため地域内企業との「共同研究率・共同発明率」が低いとわざわざ説明しているが、「地域」型大学として生き延びるためには地域内企業との連携を強化する必要がある。

今回のNISTEPによる調査は文部科学省が国立大学を三分類する前の状況を調査したものだが、「地域」型大学という戦略が現実化しているか今後も調査を重ねてほしい。