裁量労働データ「ねつ造」は民主党の責任:今こそ役所改革断行を

足立 康史

1.  裁量労働データ「ねつ造」は民主党の責任

昨日は衆院予算委で裁量労働制に関する集中審議があり、新年度予算案の採決を巡り国会が紛糾しています。厚労省のデータに不備があったため、野党は「ねつ造」とのレッテル貼りに躍起ですが、真実を言えば、概算要求も、比較できないデータを比較したのも、人材が育たないのも、全て民主系の責任です。

第一の概算要求については、昨日の予算委で自民党の橋本岳議員が「時間外労働の実態調査を概算要求した時の大臣は?」と質問し、民主党政権の小宮山洋子厚労相との答弁を引き出しました。小宮山大臣の責任を問わずに加藤大臣の責任だけを追及するのは当に二重基準でありブーメラン、伝統芸は健在です。

第二の比較できないデータを比較したのも、調査から2年後の2015年3月26日、民主党の厚生労働部門会議で「労働制度ごとに時間を比較したらどうなるか」示せと言われて、無意味と分かりつつ、仕方なく、比較できないデータを比較する表を提示した、それが独り歩きした、というのが事の次第です。

2.データ問題は国会を揺るがせるような問題か

比較できないデータを比較した表が「独り歩き」したのは問題だし、それを明らかにした国会も一定の役割を果たしたと評価しますが、では、それは、大国日本の国権の最高機関を揺るがせるような問題でしょうか。安倍総理の3選に影響を与えたり、憲法改正のスケジュールに影響するような問題でしょうか。

私は、データ比較の間違いが明らかになり、厚労相が謝罪して精査しているんだから、それで済み、でいいんだと思います。労働者の母集団が違うのに、両者を比較しても仕方ないし、特に裁量労働制下の労働者にインテンシブな業務が集まり時には残業が長くなるのは、制度が最初から想定していることです。

もちろん、裁量労働で働く者についても健康管理の観点から経営者がその労働時間を把握し管理すべきことは言うまでもありませんが、一定の法令と労使自治の下でしっかり管理され、そして今回の法案にある残業時間の上限規制を含め法令違反があれば罰する、当たり前のエンフォースメントが大事なのです。

3.法律と現実の乖離を埋めることこそ喫緊の課題

そうした観点から、むしろ由々しきことは、労働基準法のエンフォースメント=執行です。加藤厚労相が国会で答弁されている通り、労基署が一定の情報をもとに定期監督をしたら66.8%の事業所で法律違反が見つかったといいます。守れない法律が大手を振っていることこそ労働法の最大の問題なのです。

但し、経営の現場を無視してエンフォースメント=法の執行だけを徹底すると、かつての長妻山井プランのように大量の失業者を生み出すだけに終わります。工場ラインで機械的作業に従事する仕事が減って労働時間規制に馴染まない職種が拡大する中、法律と現実の乖離を埋めることこそ喫緊の課題なのです。

裁量労働制の拡大も新しい高度プロフェッショナル制度も、当に法律と現実の乖離を埋めるために導入されようとしているのに、野党6党は「人が死んでる話なんですよ!」(玉木雄一郎希望代表)と政府与党を人殺しのように非難する。一体、彼らは、日本の労働社会をどうしたいと考えているのでしょうか。

4.今こそ既得権と闘い役所改革を断行せよ

私は、モリカケ疑惑に係る公文書管理の問題も、今般の裁量労働に係るデータ処理問題も、実は「忖度」でもなければ「疑獄事件」でもなく、単に中央官庁と官僚たちの仕事が拙いこと、時代にマッチした合理的な遂行ができていないことにあると確信しています。今こそ役所改革を断行しなければなりません。

例えば、公文書管理の問題は文書管理の専門職=アーキビストの育成配置を進めなければ解決しません。法律しか知らない官僚に任せていても廃棄されるだけです。データ問題も官庁の政策立案部局に調査統計のプロが少ないことが原因です。東大法学部の卒業生も統計の素人だと知らなければならないのです。

では、中央官庁にアーキビストの育成配置が進まないのはなぜでしょうか。統計のプロが少ないのもなぜでしょうか。私は、その元凶こそ官公労であり、彼らに支えられている民主系3党と共産党だと思っています。彼ら彼女らが労働法改正に強硬に反対するのは、当に公務員労組の既得権を守るためなのです。


編集部より:この記事は、衆議院議員・足立康史氏の公式ブログ 2018年2月27日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は足立氏のブログをご覧ください。