書評:「価格」を疑え

2018年05月31日 08:30

吉川尚宏氏が書いた『「価格」を疑え』が中公新書ラクレから出版された。ビール、バター、地下鉄運賃、携帯電話料金、さらには賃金にまで政府が介入し、「官製価格」化されている現状を厳しく批判する書籍である。

携帯電話料金について政府は「0円端末の販売禁止」や「MVOとMVNO間の競争条件整備」などを進めてきた。しかし、政府の思惑の通りには料金の低廉化は進んでいない。総務省統計局「家計調査」によれば、総世帯での通信支出は2007年には月当たり10198円で、2017年には11100円である。この間に消費支出は減少したので、通信支出の消費支出に占める割合は3.9%から4.6%に増えた。

3社で寡占化した市場に4社目の参入を認め市場競争を促進するといった市場原理を重視した政策が、MVNOの競争条件整備などに比べて重要だと、吉川氏は主張する。参入可能性を高めるためには電波オークションも必要とする。電波オークションについては規制改革推進会議の答申以来、法制化に向けての検討が始まっているそうだ。楽天のMNOとしての参入も認められた。少しずつだが、吉川氏の主張する方向に動き始めている。

東京都内で私鉄・東京メトロ・都営地下鉄・JRを乗り換えると、そのたびに初乗り料金を取られるという問題についても、吉川氏は指摘している。ゾーン料金制が当たり前の外国人観光客には理解不能である。ほとんどの利用者がSuicaやPASMOを使っているのだから、料金体系はシンプルにして収入を鉄道会社間で分け合う仕組みの導入は不可能ではない。

ことあるごとに価格に政府が介入する現状から市場競争を優先する方向への転換を、吉川氏は求めている。「官製化から脱却しない限り、この先日本に成長はない!」という同氏の主張に同感する。

山田 肇
『ドラえもん社会ワールド 情報に強くなろう』監修

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