第1次世界大戦式典:安倍首相欠席は外交的大失態

八幡 和郎

11月11日は第1次世界大戦終戦記念日。パリでの前夜祭には60カ国の首脳が集結。当日の凱旋広場での式典には72カ国の首脳が参加。シャンゼリゼ通りを各国首脳は歩いて行進した。

式典に勢ぞろいする各国首脳(フランス大統領府FB動画より:編集部)

トランプもメイも、敵国だったあのエルドゥアンもメルケルもやってきた。プーチンも凱旋門にはやってきた(各国でのセレモニーもあったので少し出入りがあるが)。

そこにどうして第1次世界大戦に主要連合国のリーダーである安倍首相がいないのか。これは、安倍内閣の珍しい外交的失態であろう(麻生副総理は参加したが)。

日本が第1次世界大戦の連合国として仏英米露とともに戦ったことを世界に再確認させるべきだったのだ(日本でなんの式典もないのもおかしいが)。中国は最後になって連合国に参加したが貢献は認められず、パリ講和会議では途中で帰ってしまったから、日本のプレゼンスを示す絶好の機会だった。

私は、「トランプの軍事パレード断念の一報と、パリで想起した日本の戦争史」(2018年08月19日)で書いた。

トランプ米大統領は17日、高額な費用を理由に、今年11月10日に首都ワシントンで開催予定だった軍事パレードを中止すると発表した。昨年のフランス革命記念日のパレードに出席し感銘して計画していたものだ。(中略)そのかわりに、トランプ大統領は代わりにパリで行われる第1次世界大戦の終戦記念行事に出席するという。安倍首相もぜひ参加すべきだ。日本が先進文明国側に立って戦ったことを思い出させるべきだ。これは凱旋門の下での行事だ。

フランスでは7月14日の革命記念日についで重要な行事だ。Armistice du 11 novembre 1918といってアルミスティスと通称される。第二次世界大戦はいったん負けてから解放されたので戦勝とはいわないのだ。

W杯フランス優勝&旭日旗がパリ祭パレードの先頭に」(2018年07月16日)では次のように書いた。

フランス人にとって、単に世界大戦といえば第一次世界大戦である。この戦争で日本は連合国の一員として参戦し、旭日旗を掲げて、南太平洋のフランス領を守り、地中海に軍艦を派遣した。

このために、毎年の休戦記念日(フランスでは革命記念日に次ぐ重要な祝日)には、凱旋門広場での式典に日本は連合国の一員として参加する。

そののちに開かれた、パリ講和会議に日本は、西園寺公望、牧野伸顕、近衛文麿、吉田茂、芦田均、松岡洋右、有田八郎、重光葵らの代表団を送っている。

この会議で慣れない日本代表団は大活躍というわけには行かなかったが、フランス首相クレマンソーが学生時代に西園寺公望と交友があったこともあってよしなに計らってくれたし、ここでの経験は、そののちの国際会議において役だった。

この記念すべき年にあって、日本が明治維新以来、第二次世界大戦のただ一回の迷走を除いては、つねに、フランス、そして、英米と同じ側にあったことを思い起こしてもらうことは良いことだ。

前日には、第1次世界大戦の休戦協定が署名されたパリ郊外のコンピエーニュの森の鉄道食堂車(類似の車両を使って復元)で、仏独両首脳が会談して演説をしている(同じ車両で第二次世界大戦でフランスはドイツに降伏文書にいったん署名させられたが)。

私もここを訪問して、この戦争での連合国の一員であることを確認したし、ついでにいえば、第一次世界大戦の勝利を祝って結成された社交クラブの会員になっている。

中国との関係にあっても、中国が勝手なことをしないように封じ込めるためには、アメリカとだけでなく、インド、オーストラリア(およびイギリス)、フランスとの同盟関係が不可欠でもある。

前夜の晩餐会はオルセー美術館で開かれ、また、第一回世界平和フォーラムも開かれた。マクロン大統領は、平和の時代の最後の記念写真にならないように訴えた。

来年のベルサイユ条約100周年(6月28日)の式典がどうなるかしらないが、その機会は逃さないで欲しい。

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