韓国レーダー照射の動画公開で新たに見えた重大問題

2018年12月30日 06:01

20日の韓国海軍による火器管制レーダー照射事案に関連して、この照射を受けた海上自衛隊のP1哨戒機の動画が、28日防衛省によって公表された。アゴラ編集長の新田氏によると、この動画は即座にYouTubeの公式チャンネルにアップされ、「アップされて7時間余りの日付が変わる頃には、再生回数が140万回を超え、コメント数も6,000以上寄せられる一大反響を呼んだ」とのことである。筆者も公表されて間もなくこの動画を閲覧したが、これを見てあ然としてしまった。なぜならば、この映像にはかなり重大な問題が含まれている可能性に気が付いたからである。

YouTube 防衛省動画チャンネルより:編集部

今回、海上自衛隊のP1哨戒機は、日本海のわが国排他的経済水域(EEZ)内を哨戒中に、韓国海軍の駆逐艦「広開土大王(クァンゲト・デワン)」と韓国の救難警備救難艦「サンボンギョ」が何らかの活動をしているところを発見した。この映像や乗組員らの交話などから、事前にこれらの艦艇がこの周辺で活動している情報を入手して付近を哨戒していた可能性も考えられる。そして、その付近に漁船や救難艦の小型ゴムボートなどが浮かんでいるのを確認して、これら艦艇がいずれかの救難活動に携わってる可能性があると判断して、行動の詳細や艦種などの確認行為を実施していたのであろう。

この後の、韓国駆逐艦によるP1哨戒機への火器管制レーダー照射に関する経緯等については、24日付の筆者の記事「韓国海軍によるレーダー照射は敵意のあらわれ」で触れたのでここでは省略する。

今回の韓国の救難活動は、北朝鮮の漁船に対するものであるということはすでに韓国が公表している。問題は、「なぜ、わが国のEEZ内で韓国の救難警備艦が北朝鮮の漁船員の救難にあたっていたのか」「この救難艦の側に韓国海軍の駆逐艦が遊弋していたのはどのような意図か」「これは一時的なものか恒常的に行われているものなのか」などということである。まずは、11月21日付の朝日新聞デジタル版の次の記事をご覧いただきたい。

日本海にある大和堆(やまとたい)周辺の日本の排他的経済水域(EEZ)内で(11月:筆者追記)20日午後8時半ごろ、根室漁協(北海道根室市のいか釣り漁船「第85若潮丸」(184トン)が、韓国海洋警察庁の警備艦から「操業を止めて海域を移動せよ」との無線交信を受けた。無線を確認した日本の海上保安庁は警備艦に対し、EEZ内でのこうした要求は認められないと通告した。

つまり、今回の「レーダー照射事案」の火種はすでに一か月以上前から点いていたということである。なぜなら韓国は、竹島が自国領土としていることから大和堆付近の海域は自らのEEZであると主張しており、この海域における韓国漁船の権益保護のために韓国海洋警察庁が警備艦を派遣している。そして、今回この韓国海軍駆逐艦「広開土大王(クァンゲト・デワン):971」は韓国警備艦の護衛任務に就いていた可能性があるということなのである。

さらに、本来この海域で漁船遭難が発生したならば、たとえそれが北朝鮮の違法操業漁船であっても当然海上保安庁の巡視船などが救助にあたる。しかし、今回韓国の警備艦が何らかの情報を得て、この北朝鮮の遭難船の救助にあたっていた。これは、当該海域での北朝鮮の操業を保護しようとしているのではないかと勘繰られても仕方のない行為であり、現在の南北関係を見ているとその疑いが濃厚でもある。まさに、今回の火器管制レーダー照射事案はこれを裏付けるような形となってしまった。

即ち、北朝鮮の漁船を救助する警備艦の護衛にあたる韓国海軍の駆逐艦が、「これを発見した(見られたくないところを見られた)海上自衛隊の哨戒機を排除する目的で火器管制レーダーを数回にわたり照射した」という図式が見えてくるのである。となれば、今回の事案は決して現場の一握りの士官らによる嫌がらせどころではなく、艦長が承認した立派な「軍事的敵対行為」ということになる。もしこれらの推測が当たっているとすれば、韓国政府は事の重大性を真摯にとらえなければならない。

恐らく、米軍はもうすでにこのような重大な問題に気付いていて、どのような形で韓国に対応するか検討しているところであろう。日韓両政府にはすでに何らかのアプローチが始まっているのかも知れない。

いずれにせよ、このような事態が明らかになった以上、韓国側に逃げ道はない。もはや、レーダー照射の事実関係というレベルで問題の矮小化をしてはならない。「韓国は本気で朝鮮半島の非核化を望んでいるのか」ということを問わなければならない。日米韓が連携して北朝鮮に対する確実な制裁の履行を担保に米朝交渉を始めようとする中、このような背信行為がいかなる結果を生むか、韓国政府に対して厳しく知らしむる必要があろう。

一方で、韓国国防省と防衛省、韓国軍と自衛隊は事態をこれ以上エスカレーションさせないよう淡々と協議を重ね、偶発事故防止要領や手順などを策定し、韓国軍に厳格な履行を求めていく姿勢が大切だと思う。

鈴木 衛士(すずき えいじ)
1960年京都府京都市生まれ。83年に大学を卒業後、陸上自衛隊に2等陸士として入隊する。2年後に離隊するも85年に幹部候補生として航空自衛隊に再入隊。3等空尉に任官後は約30年にわたり情報幹部として航空自衛隊の各部隊や防衛省航空幕僚監部、防衛省情報本部などで勤務。防衛のみならず大規模災害や国際平和協力活動等に関わる情報の収集や分析にあたる。北朝鮮の弾道ミサイル発射事案や東日本大震災、自衛隊のイラク派遣など数々の重大事案において第一線で活躍。2015年に空将補で退官。著書に『北朝鮮は「悪」じゃない』(幻冬舎ルネッサンス)。

北朝鮮は「悪」じゃない (幻冬舎ルネッサンス新書)
鈴木 衛士
幻冬舎
2017-12-25
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