八幡氏VS呉座氏:「停戦」とします

アゴラ編集部

『日本国紀』を巡る評価に端を発した歴史論争。昨年11月からここまで多数の論客が参戦し、次第に『日本国紀』の是非から、歴史学者や歴史家の存在意義にまで論題が展開していきました。

日文研サイト、BS朝日サイトより:編集部

アゴラでも年明け以降、八幡和郎さんと呉座勇一さんの発信が注目を集め、時に2人が論戦することもありましたが、3月に入ってからの激しさは過去にないものになりました。

歴史学者と、作家などの学者でない歴史専門家の位置付けに関するところからの「論戦」でしたが、ヒートアップする過程で、八幡さんのFacebook上の発言が、他分野の大学研究者らによる非難を呼ぶ形で各所に飛び火し、双方に味方する人が続出して一時的に収拾がつかない事態になりました。

早川忠孝さんが指摘するような、編集部として煽った意図は全くありませんが、もう少し早い段階で介入するべきだったと反省しています。

振り返れば、論戦の途中、八幡さんが「呉座先生は資料を分析し評価するプロとしての技術や見識をお持ちですが、その分析対象の政治、外交、経済については素人」と述べたのに対し、呉座さんが「大学関係者がしばしば嘆くのは、実務家教員に二線級の人材が少なからず存在するという現状だ」と、実務家教員への厳しい批評で返しました。これに反発した八幡さんがFacebook上で「たかが助教の立場で歴史学者代表みたいな顔して他の職業のしかるべき人たちをdisるとは」と発言、大学関係者らがネット上で非難しはじめ、騒ぎが拡大しました。

途中から双方が感情的になっていたことは否めず、呉座さんも今回、編集部に「言葉が過ぎた」ことについては認められました。八幡さんも27日の投稿で、「傷つかれた読者もおられるようにも聞いているから」「お詫びするべきであろう」と表明されました。アゴラ外のこととはいえ、八幡さんも著名人としてSNSの投稿が注目される中で、誤解を招く表現は避けるべきだったと考えます。

編集部内では、今週初めに収拾に向けて検討し、呉座さん、八幡さんに「停戦」を依頼しました。その結果、呉座さんは25、26日に掲載した「八幡氏への忠告」の2本の記事(・ )、八幡さんは27日の寄稿をもって一区切りとすることに応じていただきました。これらの記事掲載後にも第三者の寄稿があり、28日に掲載したものもありましたが、編集部としては、当事者が少なくともアゴラでの停戦をされていることや、外野での不必要な対立を巻き起こさない見地から、本論争に関する投稿の掲載は当面見合わせます。

なお、一部の大学関係者が八幡さんを念頭に「経産省の天下り教員で若手研究者のポストを奪っている」との非難をしていましたが、八幡さんの地位については経産省やOBの斡旋は受けておらず、大学院設置時に実務教育の実施を念頭に文科省から義務づけられた実務家教員枠のなかでの採用です。現在も専任教員と同等の待遇も受けていないので、指摘されたような事実関係とは異なることも付記しておきます。

2019年3月29日
アゴラ編集長 新田哲史