弱い者、ハンディある者への哀憫と共感を学べる教材

2019年10月05日 06:00

Photos by K.Bito

子どもを題材にしつつも、どこか不気味な絵だ。細い線で描く絵は独自の雰囲気をもつ。読むたびにが問いかけてくる。読むたびに気づくことがある。けっして平常心で読むことはできない。

今回は、『きらわれもののマルー』(みらいパブリッシング/絵・はらふう、作・はらひで著)を紹介したい。

この本の主人公マルーは、笑うことしかできない。人に迷惑をかけてばかり。みんなにきらわれてばかり。そんなマルーを誰が創ったのか?父と娘の「大人の絵本創作ユニット」による作品。「怖すぎる」と二度と読まない人もいれば、「考えさせられる」と何度も読む人もいる。非常にインパクトのある作品。

脳裏に浮かんだのが、特別支援教育家として活動する、向野幾世さんの『お母さん、ぼくが生まれてごめんなさい』(サンケイ出版)。これは、15年間を精一杯生きた、脳性マヒ児の「いのちの詩」。「小川宏ショー」を始めマスコミで大きく取り上げられ大変な反響になる。今でも多くの人に「生命の大切さ」を訴え続けている。

ノーマライゼーションは、デンマークのバンクミケルセン(1919~1990)によって提唱された概念である。「障害者と健常者とは、お互いが特別に区別されることなく、社会生活を共にするのが正常なことであり、本来の望ましい姿(あるべき姿)である」としている。

東京オリパラの開催によって、障害者に対する理解は高まりつつある。しかし、本質的な議論が活発とはいえない。障害者支援は実践をすることで初めて身につくものであり、机上の空論ではなにも解決しないからである。そのためには、多くの人が中途半端な知識や経験ではなく実践することで、きちんとした見識を身につける必要がある。

正しい見識を身につけることで正しい理解が広まる。これは、たびたびニュースで話題になるような、障害者の問題とは「障害」を「しょうがい」と表記を変えれば解決するような問題ではない。このようなことが話題になること自体が「社会的障害」である。

ノンフィクション作家の柳田邦男は「絵本は人生で3度読むべきもの」と解説している。3回とは、「自分が幼い時」「親になって子どもを育てる時」「人生の後半、祖父母の時」の3回。よい絵本は歳を重ねていっても読むたびに新たな感動がある。新たな感動とは、年齢によって異なる視点が楽しめるということである。

大人になったいま、絵本と向き合うと、幼い時には気付かなかったメッセージに気付くことがある。絵本と向き合うことで自分の感性と向き合うことができる。

[本書の評価]★★★(77点)
評価のレべリング】※標準点(合格点)を60点に設定。
★★★★★「レベル5!家宝として置いておきたい本」90点~100点
★★★★ 「レベル4!期待を大きく上回った本」80点~90点未満
★★★  「レベル3!期待を裏切らない本」70点~80点未満
★★   「レベル2!読んでも損は無い本」60点~70点未満
★    「レベル1!評価が難しい本」50点~60点未満
星無し  「レベル0!読むに値しない本」50点未満
2019年に紹介した書籍一覧

尾藤克之
コラムニスト、明治大学サービス創新研究所研究員
※14冊目の著書『3行で人を動かす文章術』(WAVE出版)を出版しました。

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尾藤 克之
コラムニスト、著述家、明治大学サービス創新研究所研究員

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