どうなる、コンビニの深夜営業・元旦営業?

2019年12月30日 15:00

深夜営業に続き、元旦営業の是非(可否)をめぐって揺れているセブンイレブンに新たな動きがあった。12月29日の産経新聞ウェブ記事(「時短セブンの契約解除 オーナー反発、訴訟検討 31日付、クレーム理由に」)より。

セブン-イレブン・ジャパンは29日、自主的に時短営業をしていた大阪府東大阪市の加盟店オーナーに対し、31日付でフランチャイズ契約を解除すると最終通告した。オーナーが明らかにした。セブン本部は店へのクレームが多いことを理由にしているが、オーナーは反発しており地位確認などを求める訴訟を検討。店の明け渡しを拒否するとともに独自に営業を続けるという。

Koenig/写真AC(編集部)

司法判断に委ねるということなので、その推移を見守るしかないが、一点確認したいことは、「契約の自由」の観点からは、フランチャイザーであるセブン-イレブン・ジャパンの方に軍配が上がるべき事案だということである。

フランチャイザー側からすれば、「深夜営業も元旦営業も勝手に止めることはできないって契約したでしょう」ということだ。「いつでもあいている」という「ビジネスモデル」なのだからそういう契約なのであって、自分の都合であけたりあけなかったりするのなら、「セブンの看板を降ろして」ということになる(今回のケースはそれ以外の理由での解除通告であることに注意)。

しかし、フランチャイジーであるコンビニ側がここまで粘れるのは何故か。もちろん、「ブラック企業という風評」をフランチャイザー側が恐れて妥協するのではないか、という(マスコミによる影響の)期待がその背景にあるが、もう一つさらに独占禁止法という「守護神」が後ろに控えていることを忘れてはならない。

過去の記事でも引用したが、2019年4月24日付の朝日新聞記事は、次の通り報じている(「コンビニ24時間、見直し拒否で独禁法適用検討:公取委」)。

公取委の複数の幹部によると、バイトらの人件費の上昇で店が赤字になる場合などに店主が営業時間の見直しを求め、本部が一方的に拒んだ場合には、独禁法が禁じている「優越的地位の乱用」にあたり得る、との文書をまとめた。

フランチャイザーもフランチャイジーもどちらも事業者であり、プロ対プロの対等な取引だというのが契約上の建前であるが、明らかにその置かれた立場は違う。他のフランチャイザーに容易に乗り換えることもできなければ他の業種にも転換できない多くのコンビニは、強大なフランチャイザーとの関係で圧倒的な劣位に晒されている。

優位に立つ事業者は、自らに不利益になることは一切受け入れず、自らに有利に働けば相手方に不利益になることでも容易に選択する。契約の段階では「win-win」の構造にあるように見える契約も、よく見ればどちらかに一方的に有利な内容になっているかもしれない。

このコンビニをめぐる独占禁止法の問題は、フリーランス人材をめぐる同法の問題と類似する点がある。フリーランス人材に係る最近の問題は、フリーランス=プロという構図が成り立たなくなっている点に特徴がある。ギグエコノミー、シェアリングエコノミーと呼ばれる経済のあり方が浸透する中、フリーランサーは人々の「働き方」として容易に選ばれ得る選択肢である時代となった。

しかしこうした人々は労働法制の盾を用いることができない。そこで注目されたのが独占禁止法である(NHKの「視点・論点」に最近筆者が出演し、このテーマ(「フリーランス人材と独占禁止法」)で話したので参照いただきたい)。

我が国で半世紀近い歴史を持つコンビニは、「脱サラ」手法の古典のような選択肢として知られている。アマチュアが「一国一城の主」になる、そういう生き方である。「働き方の多様化」の先駆のような存在だ。確立したビジネスモデルをそのまま利用できるので、営業ノウハウに乏しいサラリーマンには飛びつき易く、それがリスク分散を重視するフランチャイザーの思惑と合致した。

もちろん営業指導に係る「面倒は見る」が、最後は「自己責任」という世界である。あらゆるビジネスと同じように、「成功する者もあれば失敗する者もある」のは当然である。どちらが正しくて、どちらが正しくないと割り切れる問題では本来にはない。ただ一ついえることは独占禁止法(公正取引委員会)がどう出るかで、問題のあり方が大きく変化するということだ。

コンビニと独占禁止法の問題は、フリーランス人材と独占禁止法の問題を考える上で重要な試金石となるだろう。

数日前、こんな時事通信の記事を見かけた(「コンビニ「柔軟経営を」=24時間営業は需要次第—経産省報告原案」)。

コンビニエンスストアの在り方を検討する経済産業省の有識者検討会(座長・伊藤元重学習院大教授)は23日、24時間営業など長時間労働の改善に向け、コンビニ大手に「店舗の置かれた環境に応じて柔軟な経営を認める」ことを促す報告書原案を公表した。来年1月に報告を正式にまとめる。報告書に法的な拘束力はないが、政府の要請を受け、大手各社は業務改革の徹底を求められそうだ。

セブン-イレブン・ジャパンは一連の問題を踏まえて、時短営業の試行範囲を拡大し検証を本格化させるとも聞く。今後、コンビニのビジネスモデルは本質的な変化を遂げるのか。人々の生活において切っても切れない存在であるコンビニの、今後の動向が注目される。

楠 茂樹 上智大学法学部国際関係法学科教授
慶應義塾大学商学部卒業。京都大学博士(法学)。京都大学法学部助手、京都産業大学法学部専任講師等を経て、現在、上智大学法学部教授。独占禁止法の措置体系、政府調達制度、経済法の哲学的基礎などを研究。国土交通大学校講師、東京都入札監視委員会委員長、総務省参与、京都府参与、総務省行政事業レビュー外部有識者なども歴任。主著に『公共調達と競争政策の法的構造』(上智大学出版、2017年)、『昭和思想史としての小泉信三』(ミネルヴァ書房、2017年)がある。

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楠 茂樹
上智大学法学部国際関係法学科教授

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