望月記者も安倍総理も一刀両断!「会館の美女」の快刀乱麻

2020年02月03日 06:00

「咢堂ブックオブザイヤー」受賞者の最新作は、辛口にして苦味も倍増

「会館の美女」の通称で、永田町では恐らく知らない人はいないであろう政治ジャーナリストの安積明子さん。昨年の著作『「記者会見」の現場で見た永田町の懲りない人々(青林堂刊)』は財団が主宰する「咢堂ブックオブザイヤー」のメディア部門大賞に決定し、財団理事からも先日賞状が贈られました。

贈呈時の懇談では最新作の話題にもおよび、発売を待ちわびていました。最新作となる『「新聞記者」という欺瞞-「国民の代表」発言の意味を改めて問う(ワニブックス刊)』ですが、前作にも増して辛口であると同時に、良薬としての「苦味」も倍増しています。

タイトルや帯だけを見ると東京新聞・望月衣塑子記者の批判本に捉えられがちですが、単なる官房長官会見への苦言に留まらず、iPS細胞をめぐる首相補佐官の問題や相次ぐ閣僚辞任、参議院選挙における運動員買収の問題などホットな問題も網羅。さらには昨年の国会風景でもっとも見苦しい場面となった森裕子・参議院議員の質問通告問題など、現在の政治シーンが抱える様々な問題を浮き彫りにした点だけでも一読の価値ありです。

書籍で気づいた、私の望月記者評。「ラポール不足」と「DoS攻撃」

書籍の感想とは異なりますが、一読することで私はふたつのキーワードを思い浮かべました。

ひとつは「ラポール」、これはもともと臨床心理やカウンセリングの用語で、例えばセラピストとクライエント(相談者)の間に「互いを信頼し安心して自由に振る舞い、感情や意見の交流を行なう関係が成立している状態」を示します。いわば取材の過程でもこうしたラポールの形成が欠かせないわけですが、そもそも菅官房長官と望月記者の間では果たしてどうなのだろうと改めて感じました。

たしかに望月記者は自由に振る舞っているものの、質問対象との関係性が構築できているか私には疑問です。むしろ、ラポール不足によってDoS攻撃のごとき存在になっていると言っても差し支えないでしょう。

独立行政法人・情報処理推進機構(IPA)によると、DoS(サービス運用妨害)は次のように解説されています。

「DoS攻撃とは、ウェブサイトのサービスの運用や提供を妨げる攻撃のことです。」

「まず、攻撃者がウェブサイトに悪意を持って細工した要求(リクエスト)を送りつけます。」

「すると、ウェブアプリケーションに問題があった場合、ウェブサーバのメモリやCPUを使い切ってしまい、その結果、ウェブサーバの処理速度が低下したり、プログラムが異常終了したりしてしまいます。」

「このような問題をサービス運用妨害(DoS)と呼びます。」

書籍を読むにつけ、本来国民がアクセス出来たかも知れない「現場の息づかい」あるいは「温度」といったのものが、実は望月記者によって損なわれているかも知れない。そんな思いが膨らみます。

同書では記者と政治家の関係構築の一例として大野伴睦と若手記者時代の渡辺恒雄・読売新聞主筆の関係構築に注目しています。大野といえば「猿は木から落ちても猿だが、代議士は落ちたらただの人だ」、あるいは「政治は義理と人情だ」などの言葉で知られ、自民党副総裁や衆議院議長などを歴任した人物でもあります。

官民ともに働き方改革が叫ばれる現在では、さすがにかつてのような「夜討ち朝駆け」は困難になりつつあるのかも知れません。それでも、寝ずの番をせずともラポール形成は可能でしょうし、望月記者の場合もまずはそこからでしょうと思わざるを得ません。

一方で、政権与党にも手加減しない。そこが何よりも評価したい点

もっとも、必ずしも取材する側とされる側が昵懇(じっこん、なあなあ)である必要はありません。それは著者も書籍中で「もちろん記者は取材対象から好かれることを求める必要はない。聞きたいことを聞くことで、嫌われることも十分ありうる。実際に筆者も個人的には好きになれない取材対象もあるし、反対に筆者の質問にカチンときた取材対象もいたかも知れない。(同書75頁)」と率直な意見を述べています。

また政府や官邸に対しても、深く切り込んでいるのは何よりも見逃せない点です。

本書の終盤では「安倍政権の責任は何より重い」「私物化された政治」、そして「加計学園問題の疑惑は消えていない」など、政府にとっても嫌な見出しが続きます。こうした是々非々のバランス感覚は貴重であり、また望月記者のみならず全ての取材者、あるいは発信者にとって欠かせない資質だと改めて思います。

出たばかりの新刊ゆえ過度の引用は憚られながらも、私が大いに膝を叩いた「あとがき」を引用します。次の一節はそのまま、私がメディアに抱く想いの代弁でもありました。

「メディア人ならば、協力し合うよりまず独立性をモットーとし、他よりもさらに真実に近づく報道を目指すのが当然ではないか。

「安倍政権を守れ」と言っているわけではない。そもそも政権を守る必要などないし、安倍政権とていずれ必ず他の政権に取って代わられる日が来る。それが民主主義の原則だ。

その原則を守るために、国民の知る権利に資する情報を提供していくのがメディアの仕事だ。だが報道する側のエゴで国民の知る権利が歪められようになっているのなら、もうメディアは存在する意義さえない。」

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高橋 大輔
尾崎行雄記念財団研究員

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