海外の中国反体制派メディア「大紀元」が3日、報じたところによると、米国インディアナ州にあるパデュー大学中国宗教・社会研究センターの楊鳳崗教授が10年前に行った社会調査では、約85%の共産党員が宗教を信仰していたという。
この調査結果が10年前とすれば、現在はもっと多くの中国国民が何らかの宗教を信じているとみて間違いないだろう。無神論の世界観を有し、目に見えないものは存在しないと教えられてきた共産党員の多くが実際は宗教を信じ、目に見えない世界の動向に強い関心を持っているというわけだ。
この記事を読んだとき、あのスターリンの話を思い出した。ソ連邦時代、独裁者スターリンは、「ローマ法王は軍隊を保有していないから、恐れるに値しない」と豪語したことがあった。ローマ法王を守るバチカン法王庁の軍は数百人から成るスイス衛兵隊だけに過ぎないから「ローマ法王には軍隊がない」というスターリンの指摘は正しい。
ところで、冷戦終焉直後、「ロシア軍兵士の約25%が神を信じている」という意識調査が明らかになったことがある。同調査ではまた、「神は存在しない」と考える無神論者は「全体の10%以下であった」というのだ。すなわち、スターリンが誇っていたロシア軍内部に既にキリスト教の福音が侵入し、兵士を着実に改宗させていたことになる。福音を伝えるキリスト者を“神の軍隊”と称することが許されるならば、ローマ法王はスイス衛兵隊より強力な軍隊を保有していたわけだ。
なお、同調査を行った社会学者は、「1917年から1991年までの間の共産政権時代には、反宗教プロパガンダが連日行われていたにもかかわらず、無神論者の数が少ないのは驚くべきことだ」と評していた(「スターリンと『神の軍隊』」2006年10月5日参考)。
中国共産党政権の習近平国家主席は「宗教者は共産党政権の指令に忠実であるべきだ」と警告を発する一方、「共産党員は不屈のマルクス主義無神論者でなければならない。外部からの影響を退けなければならない。過激主義者をその思想拡大の段階で阻止しなければならない。インターネット上の宗教活動を厳しく監視しなければならない」と強調したことがある。同主席は、先述した10年前の調査結果を知っているのだろうか。
中国共産党政権はキリスト教のシンボル、十字架の撤去キャンペーンを実施し、多くの十字架を撤去したり、破壊したりしている。宗教弾圧はキリスト教会だけに向けられているわけではなく、イスラム教に対しても同様だ。イスラム教系学校はさまざまな制限を受け、ラマダンの月には、イスラム教徒に断食中止の命令が出されたりしているという。
中国当局によると、同国の宗教者人口は人口の1割以下の約1億人といわれているが、実際はそれ以上だ。仏教徒だけでも2憶4400万人がいる。キリスト信者数は6700万から1億人と推定されている。その数は年々増加する一方、共産党員の脱党が増えてきている(「中国共産党政権、宗教弾圧強める」2016年4月27日参考)。
編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2017年8月6日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。