先般、かなりの規模の会社の社長をやっている友人と話をする機会がありました。どのような話の流れだったか忘れましたが、「社債って、負債なのか?」と訊ねられた時はいささか驚きました。
日本の企業のトップは、相変わらず「サラリーマン双六の上がり」のような人物が多いのは周知の事実です。そして、企業トップに必要とされる最大の能力は「調整能力」だと言われています。
従業員が多くなると、派閥のようなものが自然に出来上がってきます。
大小様々な派閥がありますが、それらの利害関係を上手く調整できる人がトップになることが多いようです。実務的な事は全て下に任せて…。
確かに、IT技術や法律実務、その他テクニカルな分野は、一人でマスターすることはできません。
下手に知ってしまうと大やけどをする怖れすらあります。
マーケティングの知識や経営戦略の知識も日進月歩なので、昔の知識に拘泥されるの部下が困ってしまいます。
しかしながら、財務諸表を読む力はトップの必修科目です。
自社の財務諸表を念頭に置いて、売掛金や買掛金のタームが妥当かどうかがすぐにわかるようでなければ経営者は勤まりません。
かつて、日産自動車が「売上代金の早期回収」を打ち出したところ、資金繰りが驚くほど良くなったという話を聞いたことがあります(真偽については自信がありません)。逆に言えば、それまでのトップは漫然と財務諸表を眺めていただけだと推測することができます。
地方の企業の中には、都会から来た「経営コンサルタント」に綺麗にレイアウトされた財務分析結果や顧客数の推移などを作成してもらうだけで、驚くほど高額な費用を支払うところがあります。無知に付け込まれて、思いっきりカモられてしまうのです。身近にいる税理士さんも財務分析が出来ない人が多いからかもしれません。
会社の財務分析は、人間で言えば健康診断の結果のようなもの、いえ、毎日測定する体重のようなものに例えた方がいいかもしれません。自分の体の状況を他人任せにする人はいないでしょう。
同じように、自分が経営している会社の状況を知らず、部下任せにしてしまうのは、あまりにも危険です。
会社のお金を横領する事件が多発するのも、経営者が財務を知らず、全てを部下に一任してしまうことが原因です。薄っぺらいムック程度のもので、財務分析の知識は大まかに頭に入れることができます。
学習するのは容易だし、経営理論のように頻繁に変遷することもありません。経営者のみなさんは、必須科目だと思って最低限の知識はきちんと仕入れておいて下さいね。
編集部より:このブログは弁護士、荘司雅彦氏のブログ「荘司雅彦の最終弁論」2017年8月30日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は荘司氏のブログをご覧ください。