法科大学院は“国家的詐欺”で、大卒の肩書は“無意味” ⁉︎

荘司 雅彦

数年前、とある知人が「法科大学院制度は国家的詐欺だ!」と言って、憤っていました。
よくよく聞いてみると、彼の言い分はかなり筋が通っています。

法科大学院制度が創設されたときは、文科省や法務省は大々的に「卒業者の7割が法曹になれる」と打ち出していました。

その後、名も知らぬ大学まで法科大学院を設立したことを知った私たち弁護士らは、「7割は絶対にありえない。7割も通したら司法修習ができない」と判断していました。

しかし、部外者にはそんなことはわかりませんでした。

私の知人は、それまで勤めていた一部上場企業を退職して某大学の法科大学院に通いましたが、“三振”をして(当時は司法試験の受験回数が3回までで、3回受けて合格しないと受験資格を失います)法曹への道を閉ざされました。

ところが、彼の真の悲劇はその後にあったのです。
一流大学を卒業し一部上場企業で10年以上勤務していたので、贅沢を言わなければ就職できると思って中途採用面接を受けたら、「法科大学院まで出てどうして3回も司法試験に合格しなかったのですか…」と、採用担当者から冷ややかにあしらわれ、すべて落とされたのです。

採用担当者は司法試験の事情など全く知らず、法科大学院を卒業したのに3回不合格になった彼を”落ちこぼれ”だと判断したらしいのです。国の甘言に騙されて、高額な学費を支払って、その上キャリアまで二級品にされてしまった…「国家的詐欺」という彼の表現はあながちま的外れではないでしょう。

別の知人で、かつて家庭の事情で高卒で就職せざるを得ない人がいました。求人欄の「大卒以上」という壁に何度もくじかれた彼は、2人の息子を必死で大学に入れて卒業させました。

「1人は家電量販店の店員で、もう1人はパチンコ屋の店員だよ。大学の学費を返してもらいたいよ」とボヤいていました。
昨今は、分数どころか九九もできない大学生が増えているそうです。

にもかかわらず、首都圏の大学や学部の新設抑制に猛反対する論説が頻繁に発表されています。奨学金の滞納が増えるのも当然でしょう。九九も出来ない大卒を喜んで受け入れる職場などありませんから。

法科大学院も大学も、(原資がなんであれ)学費を払ってくれて、教員や事務員の給料が賄えれば、後は自分たちの知ったことではないのです。「自己責任」というやつでしょう。

本来「自己責任」を負うのは法科大学院や大学という組織なのです。完全な独立採算で運営しているのであれば、何ら問題はありません。しかし、補助金や助成金という莫大な血税を受け入れながら、卒業生だけに「自己責任」を押して自分たちは安泰というのはあまりにも無責任です。

大学入学の要件としてせめて英検3級くらいは義務化してはいかがでしょう?
英検合格者数に応じて、補助金や助成金を機械的に支給するという透明なシステムにするのです。合格者ゼロの大学には一切支給をしません。

このようにシステムを透明化すれば、不要な大学を恣意的に生かし続けているという批判もなくなるでしょう。さもないと、毎年同じノートを読んでいるだけの教官と文科省役人の天下り先に血税が注がれ、卒業生は悲惨な状況に置かれてしまいます。

英検3級は「中学卒業程度」のレベルという大甘のハードルです。大甘のハードルでも、課すことによってずいぶん大学生が現象して血税の無駄遣いがなくなると私は想像しています。

そのくらいひどい状況が現実なのです。

中学受験BIBLE 新版
荘司 雅彦
講談社
2006-08-08

編集部より:このブログは弁護士、荘司雅彦氏のブログ「荘司雅彦の最終弁論」2018年2月16日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は荘司氏のブログをご覧ください。