こんばんは、都議会議員(北区選出)のおときた駿です。
本日は都議会本会議の初日となりまして、小池知事による所信表明演説が45分ほど行なわれました。
内容としては「総論ではみんな賛成だよね」というものに終始し、ヤジが一切飛ぶこともなく、非常に静かな立ち上がりとなりました。
本日の都議会本会議は閉会しました。小池都知事がぶら下がり会見で挙げた重点項目は、待機児童、超高齢化対策に、20年大会、ラグビーW杯準備といったところで、当たり障りなさすぎて、取りつく島がありません。それ以外に何か隠し玉があるという雰囲気もなく、めっきりオーラが失せた感じです。 pic.twitter.com/2HUZYvevYL
— 豊洲市場担当記者@日刊食料新聞 (@nikkan_toyosu) February 21, 2018
メディア関係者も「取り付く島がない」と表現するように、知事としてはこれからはエッジを効かせた改革を標榜するのではなく、摩擦の少ない無難な都政運営を目指して行くのかもしれません。
昨年の期待や熱気に比べると、残念で悲しい気持ちになることは確かですが、都政を前に進めるために活発な議論を展開していきたいと思います。
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そうした中で今日は、民主主義国家としてあってはならないことが起きてしまいました。
去年11月に行われた葛飾区議選で1票差で落選した候補者が、最下位で当選した議員の当選無効を訴えた申し立てに対し、都選管は最下位で当選した議員の得票の中に無効票と認められる票が2票あったとして、当選を無効とする裁決を出した。https://t.co/rSUnp9kziA
— NHK@首都圏 (@nhk_shutoken) February 21, 2018
昨年11月の葛飾区議選で、私や上田都議が推薦した大森ゆきこ氏が、一票差という劇的な当選しました。
事実はドラマより奇なり?!まさかまさかの一票差で、応援した両候補が無事当選
http://otokitashun.com/blog/daily/16523/
これに対して次点の候補が異議申し立てを行い、票の数え直しを求めていました。
こうした申し立てはほとんど「言いがかり」に近いもので、実際に葛飾区選挙管理委員会(選管)もこの申し立てを却下したので、正直なところ楽観視をしていました。
ところがなんと、東京都選挙管理委員会が有効票の解釈を変更をし、結果を覆すことになりました。
詳細はすでに、採決書なども含めて大森ゆきこ区議本人もブログに書いておりまして、
お待たせしました。大森ゆきこの当選無効の裁決書 抽出票添付
⇒ https://t.co/mXJrTeVPMO #アメブロ @ameba_officialさんから— 大森ゆきこ 前葛飾区議☆ (@yuki_katsushika) February 21, 2018
実際に開票作業を行った葛飾区選管が票を数え間違ったのではなく、彼らが「有効」と判断した票を都選管が2票「無効」としたのです
具体的には「大森ひでこ」「大森ようこ」と書かれたものの2票です。
電子投票でも記号式でもない「記名式」という古式ゆかしい方法を主に採用しているわが国の選挙では、漢字も含めた氏名の間違いが頻繁に起こることは避けられません。
実際に「大森ゆかり」や「大森みゆき」などの票も発生しており、それらはすべて有効票としてカウントされています。
(大森ゆきこ区議ブログより抜粋)
というのも、公職選挙法第67条において
「その投票した選挙人の意思が明白であれば、その投票を有効とするようにしなければならない。」
と規定されており、最高裁も
「投票の記載が候補者名と一致しない投票であっても、その記載が候補者氏名の誤記と認められる限りは当該候補者に対する投票と認めるべきである」
と判例を出しているからです。
このため、選挙管理委員会は「選挙人の意思が明白」か否か、「誤記と認められる」のかどうかを慎重に判断し、有効か無効であるかを判断するわけですね。
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今回、「大森ひでこ」「大森ようこ」の2票が無効とされたのは、同名の候補者「木村ひでこ」「くぼ洋子(ようこ)」が存在したため、これは選挙人が2名に対して投票しようと意思を示している「混記」だからという理由でした。
一方で、「みずま雪絵(ゆきえ)」という候補がいたにもかかわらず、「大森ゆきえ」という票については有効と判断されています。
つまり、この部分が都選管の恣意的な「解釈」なのです。
都選管の裁定書には「類似性が云々」という理由が書いてありますが、結論ありきのようで合理的な解釈とは思えません。
上記の裁定書の中にもあるように、最高裁は判例の中で「混記」として無効とするものは
「いずれの候補者氏名を記載したか全く判断しがたい場合に限るべき」
としており、
「そうでない場合は、いずれか一方の氏名にもっとも近い記載のものをはこれをその候補者に対する投票と認め」
るとしています。
これに則れば「大森◯◯こ」まで3文字が合致しているのだから、有効と解釈するのが妥当であり、だからこそ葛飾区選管はこの2票を有効としていたはずです。
『もっとも近い記載』は、明らかに「大森ゆきこ」しか存在しませんから。
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そもそも区選管と都選管で判断基準が異なるなど、民主主義社会の根幹である公正な選挙においてあってはならないことです。
当落者に影響を与えるのはもちろんのこと、有権者の「一票の重み」をこれほどバカにした話はありません。
本件については高等裁判所に提訴されるということで、司法による正当な判断が下されることを望むものです。
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多くの場合有権者は、投票所の外に貼ってある写真付きの掲示板を見て、最終的な投票先を決めます。
記名式の選挙において数十人の候補者が立候補する場合、投票所に入ってからそのイメージを記憶し続けることは難しく、氏名を書き間違えてしまうことは想像に難くありません。
このようなミスを防ぐためにも、またその記載内容について人為的な「解釈」の余地を残さないためにも、電子投票やネット投票などの導入はより真剣に議論されるべきではないでしょうか。
何かと「結果が操作されるのでは…?」と不信をもたれるネット投票ですが、紙だから不正が起きないというわけではなく、先般も甲賀市で投票用紙が焼却隠蔽されるという信じがたい不正行為が発生しました。
甲賀市選挙不正 総務課長「投票用紙、自宅焼却炉で処分」
https://mainichi.jp/articles/20180208/k00/00m/040/082000c
電子投票やネット投票ならば票の行方がシステムで管理・監視されますので、こうした不正行為が発生する余地はありません。
記名式で「名前を書いてもらう」というのも政治家としては嬉しいものではありますが、こうしたことをきっかけに選挙という古い世界にも合理的なシステムがもたらされることを期待し、自分自身も働きかけていきたいと思います。
それでは、また明日。
編集部より:この記事は東京都議会議員、おときた駿氏(北区選出、かがやけ Tokyo)のブログ2018年2月21日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はおときた駿ブログをご覧ください。