米国のトランプ大統領が対中制裁関税の1千億ドル積み増しを検討するとしたのに対し、6日に中国も必ず反撃するとして対抗措置を取る姿勢を示した。ムニューシン米財務長官が貿易戦争になる可能性はあると指摘したことも嫌気して、米国株式市場は中国事業の比率が高い建機のキャタピラーなど主体に下落し、6日のダウ平均は572ドル安となった。やられたらやり返す、倍返しではないが、貿易戦争への懸念が強まった。
ところが、トランプ政権の幹部らから貿易戦争を回避する時間は十分にあるとの発言があり、9日の米国株式市場では、米中の貿易摩擦を巡る過度な警戒が後退し、ダウ平均は一時400ドルを超す上昇となった。しかし、今度はFBIが9日にトランプ大統領の顧問弁護士の事務所を捜査したと報じられ、上げ幅を縮小させてダウ平均は46ドル高となった。
中国の習近平国家主席は10日、中国海南省で開催中の博鰲(ボアオ)アジアフォーラムで演説し、「開放の新たな段階」を約束した。 演説は新政策をほとんど提示しなかったが、輸入促進や製造業の外資保有制限緩和、知的財産権の保護拡大に向けた提案を確認ないし膨らませた。これを受けてトランプ大統領はツイッターで、「関税や自動車障壁に関する中国の習主席の丁重な言葉に深く感謝する」と述べ、「知的財産と技術移転に関する見識」にも謝意を示し、「われわれは共に大きく前進する」とツイートした。これを受けて米中貿易戦争に対する懸念が後退し、11日の米国株式市場ではダウ平均は428ドル高となった。
そして今度は、12日にトランプ大統領はシリアに対しミサイルが飛んでいくぞとツイッターに書き込み、シリアに対するミサイル攻撃を強く示唆した。これに加え、トランプ大統領はシリアのアサド政権を支援しているロシアを批判。米国とロシアの関係悪化も危惧され、米国市場はあらためてリスク回避の動きを強め、12日のダウ平均は218ドル安となった。
ところが今度は、トランプ大統領はシリアをいつ攻撃するかを言ったことは一度もないとツイッターに書き込み、これを受けて米国によるシリアへの差し迫った軍事攻撃はないとの見方が強まった。13日の米国市場はリスク回避の巻き戻しといった動きとなり、ダウ平均は293ドル高となった。
このように、ここにきての米国株式市場は連日のようにトランプ大統領によって振り回されている。そして今度は、トランプ大統領はTPP復帰検討を指示と複数の米メディアが伝えていた。こちらは中国絡みの面もあるが、中間選挙を控えて米国内の農業関係者に配慮するためとの見方もある。トランプ大統領はあらたな材料をまた投下した。
いずれにしても、トランプ大統領の周辺が騒がしい上に、外交上の問題に対して、自ら真っ先にツイッターに投稿することで、市場は過度に警戒心を強め、それをあとでフォローする格好となることで、米国の株式市場や債券市場は日替わりメニューのごとく上げ下げとなり、振り回されてしまっている。
むろん、トランプ大統領に絡んだ要因だけでなく、別の要因も市場に影響を与えてはいようが、なにぶんトランプ大統領絡みの動きは、貿易だけでなく軍事的な衝突まで意識させる内容なので、無視できない状況にある。このような相場はトランプ政権が続く限り、今後も継続するというのであろうか。
編集部より:この記事は、久保田博幸氏のブログ「牛さん熊さんブログ」2018年4月14日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。