G7首脳会合と米朝首脳会談の副産物は、米国の影響力低下?

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カナダで8~9日に開催されたG7首脳会合は、報道の通りトランプ大統領が共同声明を承認しないという異例事態を経て閉幕しました。

直前にトランプ大統領がツイッターでトルドー加首相やマクロン仏大統領を口撃していただけに、想定内だったような気がしますが、G7明けのアジア市場は加ドル安・豪ドル安・NZドル安・円高で反応しましたね。

さてソーシャルネットワーク(SNS)では早速、G7サミットでの一枚がmemeとなって大きな話題を呼んでいます。その一枚とは、首脳陣が取り囲むなかでメルケル独首相がトランプ大統領に迫るこちら(リンクをご覧下さい)。

SNSでは、ご覧のmemeで大盛り上がり。

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(出所:Twitter

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(出所:Twitter

ところで、メルケル独首相ばかりではなかったのですよ。首相官邸のツイッター英語版でも、こんな一枚が。眉を寄せながら発言中のトランプ大統領をじっと見つめる安倍首相をはじめ、ボルトン補佐官など米国陣営の表情まではっきり映し出した、貴重な写真です。

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(出所:Twitter

トランプ大統領は、歴史的な米朝首脳会談後に開いた記者会見の質疑応答でG7首脳会合につき「非常に良い会合だった」と振り返っていました。フィルムに収まったメルケル独首相との会話も「メルケル独首相とは非常に良好な関係で、共同声明の出来上がりを待っていただけ」だと主張したものです。そうはいっても、「貿易で米国を利用した最大の国は中国で、次に欧州連合(EU)で、1,510億ドル失った」、「カナダに対し米国は非常に大きな貿易赤字を抱える」と糾弾姿勢を維持。あの一枚が切り取ったG7会合のムードは、やっぱり間違っていなかったのです。

さてG7と米朝首脳会談というビッグイベントを消化した後で、CNBCの政治記者は「世界における米国の影響力低下を表す週だった」と批判。G7首脳会合でのトルドー加首相やマクロン仏大統領への非難、米朝首脳会談後の米韓軍事演習中止の表明などを指しています。

共和党有力議員の反応も、芳しくありません。引退を表明済みの議員を中心に真っ向からトランプ政権に反旗を翻すほか、米朝首脳会談を歓迎しながらも慎重な姿勢を覗かせています。

・マケイン上院議員(アリゾナ州、引退表明済み)
→「大統領がそうでなくとも、米国人はあなた方と共にいる」(ツイッター

・サッセ上院議員(ネブラスカ州)
→「(ロシアのG7復帰を求めたトランプ大統領に対し)これでは弱い。プーチンは我々の友人ではなく、大統領の親友というわけでもない」(声明

・フレーク上院議員(アリゾナ州、引退表明済み)
→「ロシアはG7に加入すべきではない」(ツイッター
→「(ナバロ通商製造業政策局長によるトルドー加首相への“地獄に特別の場所がある”との発言に対し)共和党の同志よ、これは我々ではない。これは、我々の党であり得ない」(ツイッター

・コーカー上院外交委員会委員長(テネシー州、引退表明済み)
→「(G7でのトランプ大統領の対応に)大統領は我々の友人を激怒させると共に、敵対者と親睦を深めることが好きなようだ」(CNN
→「金正恩氏との会談は喜ばしい・・具体的に何が起こったか判断することは難しい」

・コリンズ(メイン州)
→「(ナバロ通商製造業政策局長の発言に対し)全くもって事態打開に与しない・・私は、ホワイトハウスのスタッフ間、さらに大統領自身とトルドー加首相との口論がどれほどダメージを与えているか懸念している」(CNN

・マコーネル上院院内総務(ケンタッキー州)
→「(米朝首脳会談後)歴史的な第一歩だった・・検証可能な取引に到達できるか試される。仮に北朝鮮が合意に従わないなら、米国と同盟国は最大限の圧力を復活させる用意がある」(記者団に対しコメント

・ライアン下院議長(ウィスコンシン州、引退表明済み)
→「(米朝首脳会談後)交渉が前進するなか、最終的に受け入れ可能な成果は、完全且つ検証可能で、不可逆な非核化だ・・・北朝鮮が今回は真剣に取り組むのか、時間が教えてくれるだろう。その間に、我々は最大限の経済的圧力を講じ続けなければならない」(声明

鉄鋼・アルミ関税発動の根拠法となる通商拡大法232条が大統領令での賦課を認めるなか、反トランプ派の共和党上院議員は民主党と組み、関税発動前の精査を盛り込んだ法案を提出済みです。ただ、中間選挙を控え地元での選挙活動を予定するため同法案が可決するかは不透明。共和党下院議員の間でも上院案を支持する声は聞かれず、コール下院議員(オクラホマ州)は「上院議員の多くは再選を目指ししていないため勇敢になれるが、下院議員は再出馬する者ばかりだ」と発言した上で、「大統領と戦う気はない」と回答していました。ブラント下院議員(モンタナ州)も、関税発動阻止に動くかとの問いに「ノー」を返すのみ。メディアがいかに反トランプ寄りの共和党有力議員の声を報じたところで、少なくとも中間選挙が終わるまで大勢が変わりそうにありません。

(カバー写真:The White House/Flickr)


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2018年6月13日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。