要介護の祖父を連れて免許返納した孫のツイートが話題。みえた課題と対策

奥村 シンゴ

池袋で87歳男性の乗用車が暴走し31歳の母親と3歳の女の子が死亡した事故後、免許返納をする人が相次いでいるという。

東京ではGWの3日間だけで1200人が免許返納をしたというが、その道のりはけっして平坦ではなさそうだ。

ところで、先日ツイッターで孫が80代の要介護状態の祖父を警察に連れて高齢者の免許返納せざるをえなかったという趣旨のツイートが話題になっている。

そのツイートからみえた課題と対策を筆者の体験談を交えながら書いていく。

写真AC:編集部

要介護状態の祖父を連れて警察へ返納

ツイートが下記の通り。

免許の返納めっちゃ大変。 ボケ始まってる要介護状態の祖父に、書類書かせる? 返納に手続完了まで1時間ほどかかります本人いなきゃダメ? 祖母が書類があれば郵送してもらえませんか?と聞いたら無理ですの一点張り。 もっと気軽に返納できなきゃ返納しんわ。

このツイートをつぶやいたのは、あずささん。ツイッターアカウント(@azmal1110101)で2万7千超リツイート、4万2千いいね超を記録。普段は署名サイトで給特法の廃止を訴えている。

子どもたちに教育の質を保障する為 ブラック残業の抑制を! 教員の残業代ゼロ法「給特法」を改正して下さい!(Change.org)

給特法とは公立学校の教員が時間外勤務手当や休日勤務手当を支給しない代わりに給料月額の4%を支給する法律。

給特法は長時間労働やサービス残業をうむと問題視されており、あずささんの夫も先日15時間働いたそうだ。

あずささんに早速取材しお話を伺った。

あずささんの祖父の介護は平日が祖母、土曜・日曜は叔父叔母夫婦がみている。

一度土日に叔父叔母夫婦が返却証明書や無効になった運転免許証の返納に連れて行ったが、「土、日は手続きしていない」と言われ、帰宅。

そして、あずささんが祖父の手続きを代行することになり、要介護状態で免許場に行くことができないと判断。

警察に「返却証明書や無効になった運転免許証の郵送ができますか?」と問い合わせ。

すると、警察から「直接ご本人に来てもらわないと、受理はできません。」と断られた。

なので、あずささんが祖父を警察まで連れて行き免許を返納したという。

書類手続きが煩雑なうえに、返納日時に限りがある

免許返納や運転免許を返納した証明書(運転経歴証明書)は代理人でも申請は可能。

だが、委任状、病気、負傷等やむを得ない理由で自ら手続できないのを証明する書類、申請者本人と代理人の関係を確認できる書類などが必要。

申請窓口や時間は各警察署が月曜~金曜の午前~夕方、運転免許センターは月曜~金曜の午前~夕方と日曜の午後も申請可。

土曜は各警察署や運転免許更新センターの申請窓口はお休み。

個人情報の重要性が問われる中、警察の言い分もわからないわけではない。

だが、あずささんの家庭は土、日しか返納する日がないわけだ。

委任状、病やケガを証明する書類、本人と代理人が確認できる書類などがないと要介護状態であっても本人を連れて行かないと手続きできないのでは、免許返納が進まないのではないだろうか。

現状、本人以外の代理人手続きは書類の手続きが煩雑で返納日時が限られる。

また、自宅から運転免許センターが遠方の場合、警察での手続きが基本的に月曜~金曜までというのも不便に思える。

筆者も認知症祖母と手続きでバトル

あずささんのご家庭のように祖父を祖母が介護する老々介護は深刻な社会問題だ。

私事で恐縮だが、30歳過ぎから祖母の在宅介護を6年間経験したが、生命保険の手続きに苦労した。

手続き上どうしても本人確認が必要というので、祖母を電話に出すと「あなた、どなたなの?何しようとしてるの?勝手に手続きしないでちょうだい」と怒った。

祖母が要介護2で認知症が進行しはじめていた時で、「生命保険に入る」ということを理解できなくなっていた。

さらに、筆者が「生命保険の書類書いて印鑑押してな」と言っても、祖母は「書きません。あんた私のお金を盗もうとしているんちゃうかいな」の繰り返し。

あずささんの祖父も「なんで俺が書かないといけないんだ」と何度も怒った。

手続きを一緒にする者にとって心身の疲労やストレスは大きい。

4点の対策

高齢者の免許返納がさらに進むには、手続きの簡素化が急務だろう。

主に4点考えてみた。

  1. 委任状がなくても代理人が免許を返納できるようにする
  2. 警察が自ら返納申請者のもとに行くか、免許返納専門の委託業者をつくり代行させる
  3. 政府主導でマイナンバーカード1枚の中に現在免許返納に必要な書類のデータを全て入れこみ、代理人が窓口かネットで手続き可能にする
  4. 免許更新センターが遠方で返納が不可能な場合、土・日・祝も各警察署で返納可能にする

これらの方法をぜひ検討していただき、スムーズでわかりやすい手続きになれば免許返納者が増え、池袋のような若く幼い命が奪われることは激減すると考える。

奥村 シンゴ フリーライター
大学卒業後、大手上場一部企業で営業や顧客対応などの業務を経験し、32歳から家族の介護で離職。在宅介護と並行してフリーライターとして活動し、テレビ、介護、メディアのテーマを中心に各種ネットメディアに寄稿。テレビ・ネット番組や企業のリサーチ、マーケティングなども担当している。