菅首相が原発増設の凍結示唆をコメントした。本質的な事を考える事が決してなく、何時も、保身と思い付きのパーフォーマスが全ての菅首相の事であるから、何れ唐突にこういう事を言うんだろうと予測していた。
国内には福島第1原発を含め54基の商業原発があり、政府は2030年までに14基以上を新増設することを計画している。首相は3月に共産党の志位和夫委員長と会談した際にも「白紙を含め検討する」と述べていたが、国会でも事故の検証を踏まえて再検討する方針を示した。
しかしながら、困難が生じたので止めるでは話にならない。人類の歴史は困難を克服し、乗り越えたもののみが生き残る事を示している。
原発増設の凍結示唆に鑑み、菅首相が是非ともやらねばならない事は、原発問題の本質の分析と、凍結した場合の代替電源導入の可能性を詳らかにする事で、国民に無用な動揺を与えない事である。
何度も繰り返すが、電源に占める電発の割合は既に充分大きく、2030年までに予定していた14基以上の新増設を取り止めると言う事は、即ち、老朽化した原発を逐次廃炉にし、緩やかではあるが原発から撤退する事を意味する。
かかる重要な方針転換を発表する以前に、民主党内で党内議論をした経緯も見当たらないし、国会審議な成された様子も伺えないのは実に奇妙である。
上記問題は国会の場で議論して貰うとして、ここでは、代替電源の確保は既に喫緊の課題であり、現状の問題、リスクに就いて説明したい。
代替電源を考える際に忘れてはならないのは、LNGは直接、石炭火力の燃料と成る瀝青炭は若干のタイムラグを経てその価格が原油価格にリンクしていると言う事実である。
従って、日本が脱原発に舵を切り化石燃料に回帰する事は、既に投機の対象商品である原油価格暴騰リスクに日本の将来を晒す事になる。
そんなリスクの高い所に日本が身を置いて、本当に良いのか?
最大の不安定要因は、中東の地政学的リスクの高まりである事は言うまでもない。そして、その背景にあるのはアメリカの中東へのコミットメントの低下である。
混沌とする中東の今を理解するのに野口元大使のこの記事は参考になる。
「イスラエルとサウディはww2の時に米国がソ連と反ナチで手を結んだように、一時的な戦略同盟を結ぶべきである。
これはサウディにとって想像もできない選択かもしれないが、イスラエルと手を結ばなければサウディと湾岸王制国家は核イランの最初の犠牲者になるであろう。
両国ともオバマが如何に平然とアラブの長年の友人・・ムバラク・・を見捨ているかを見てきた。この点イスラエルの方が友人に忠実である。
イランは2012年には核兵器を入手すると言われるが、その頃には米等の軍事的プレゼンスは中東地域からなくなる(注:イラクとアフガンからの撤退のことと思われる)。
イスラエルだけが、イランの核兵器を阻止する能力と意思を有する国だが、イスラエルもイランを攻撃するには、サウディ上空通過等のサウディの協力が必要で、またイスラエルは何よりもパレスチナ独立国家承認と言うアラブの火遊びを押しとどめるためにサウディの協力を必要としている。
サウディがイスラエルと同盟を必要とする理由はいくつもある。
①イスラエル指導部はオバマよりもアラブ指導者に対して忠実である。
②シリアに見られる通り、イスラエル敵視政策は、もはやアラブ政権の安泰を保証しない
③核イランはイスラエルではなくサウディ等の湾岸諸国にとってこそ脅威である
④オバマはイランに対して軍事力は行使しない。これに対してイスラエルは既にイラクの核開発(1981年)及びシリア(2007年)に対して実力行使をした実績がある
⑤パレスチナ国家の独立は、その地が将来選挙かテロかは別にしてハマスに乗っ取られ、イランの手先ができるだけである」
http://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-4056900,00.html
この記事が書かれた背景には、イスラエルのアメリカに対する不満の高まりがあるのは明らかだ。
エジプトのムバラク大統領、イエメンのサレハ大統領と言った、永らくアメリカの盟友として親米政権を率いてきた共和国の元首を次々と見捨てるアメリカ、オバマ大統領に対し、イスラエルは不満を持ち、産油国のサウジや湾岸諸国の国王は明日は我が身と不安に眠れぬ夜を過ごしている毎日ではないか?
上記提案は露骨に言えば、サウジに成り代わってイスラエルがイランを空爆してあげるので、軍事同盟を締結しサウジ空域の通過を許可して欲しいと言うものである。
サウジがこの提案に応じるとはとても思えないが、こういう提案が具体的に成される所まで中東は来ていると言う事は日本としても認識すべきである。
中東や石油、そして石油価格に価格がリンクする化石燃料への依存は、絶対にこれ以上高めるべきではないと言うのが、今回の私の主張である。
山口 巌
コメント
原発凍結の発言は電力会社の経営陣にとっては渡りに船だと思いますよ山口さん。彼らは自分の所の原発で福島と同じ事が起こったらどうなるか充分過ぎるほど考えたでしょう。経営は破綻し社長以下役員は国賊扱いされ石もて追われる。退職金は返上、年金も大幅カット。原発を止めればこのリスクがなくなる。会社の利益は少し減るかもしれないが彼らの待遇や収入は変わらない。火力の余力もあるので供給責任は果たせる。発電コストは上がるが原発を止めるのが国の方針だったら料金値上げも反発はない。
もともと原発を始めたのは国の方針だったからで経営上のリスクはあってもメリットは何もなかったのですよ。競争が皆無のビジネスで発電原価を下げるメリットはありません。だから東電ではT社とH社が堂々と談合していたのです。役所じゃないから談合も違法ではありませんからね。
増設の凍結はとても良いことだと思います。
今ある原発の災害対策をしたうえで寿命まで使い、その間に多様な電源を開発すればいいのです。
電力・送電の分離と自由化は必須です。
大規模な発電所から小中規模で多様かつ複合的なな発電システムへのシフトも必要です。
設置基準・管理体制が見直されていないのですから、まず凍結すべきでしょう。
凍結解除は、国民に決めさせれば良いのでは?
・オール電化が無くなる
・割安な深夜電力が無くなる、縮小する
・化石燃料高騰時に、電気代が最大2倍くらいになる
特に関東は、直ちにこのような影響が出てくるでしょうから、
一度こういう経験をさせて選択させるべきです。
個人的には、作るヒマがあったら1基でいいから軽水炉を普通に解体した
実績を作れ、と言いたいです。
* ただ、化石燃料が値上がりしても あまり原価が上がらない要素もあります。
民間からの買電価格が低ければ、自前設備をピーク負荷用に回せば・・・
まあ最初からそうしておけば、元々の電気代がもっと安かっただけなんですが。
何時も保身と思い付きのパーフォーマスが全ての菅首相ですが、これは民主主義国家での選挙の結果民主党が与党になり、そして菅氏が首相になったのです。つまり日本のどこかが致命的におかしいのです。それは選挙のシステムかもしれませんし国民の社会人としての成熟度かもしれません。これを真剣に考えないのなら将来日本は G8から落っこちるでしょう。それはそんなに遠くない未来かもしれません。
電力の化石燃料依存度を増やすというのは、山田殿のおっしゃるとおりいろんな意味でリスクが高まると思います。石油価格変動について以下に書かれています。
http://www.enecho.meti.go.jp/topics/hakusho/2009energyhtml/p1-1-1-1.htm
ここに書かれているグラフを見ればわかるように、石油価格はさまざまな要因に振り回されすぎます。だから原発をゼロにするのは不可能ではないかもしれませんが、そのデメリットに対する対策を考えていかないのなら悲劇がおこるでしょう。福島原発で安全軽視のデメリットを『見ザル言わザル聞かザル』して悲劇が起きてしまったのと同じように。
化石燃料を使うとしても、国内の海底のメタンハイドレートや天然ガスの開発にもっと力をいれるべきでした。
なぜ政府はそこに徹底的に力を入れなかったのかがとても不思議です。