アメリカ大統領選候補者選びの大きな山場であるスーパーチューズデーが終わり、結果がほぼ出そろいました。今回、14州の戦いでバイデン氏が9勝、サンダースが4勝、初参戦のブルームバーグ氏が1勝となりました。
注目されたブルームバーグ氏は準備不足やそれまで他候補者がこなしてきた論戦を十分に経ておらず、あたかも金の力でシード権を取ったような途中参加があだとなったようです。本稿を書いているNY時間の午前中にブルームバーグ氏の撤退のニュースも伝わってきました。大金はたいて中途半端で後味の悪い結果となりました。ウォーレン氏も今回、地元のマサチューセッツでバイデン氏に敗北し3位と振るわず、どの州でも勝利できなかったため、遅くとも次の10日の6州の選挙の結果次第で撤退するとみています。
そうなるとブルームバーグ氏の潜在票はバイデン氏へ、ウォーレン氏の潜在票はサンダース氏に流れ、候補者選びは絞られると思います。数の上ではバイデン氏が有利になっています。サンダース氏はリベラル色が強い西部を抑える展開が続くと見込まれますがバイデン氏有利と見るのが妥当でしょう。
個人的には目線は次のステップに移ってきています。バイデン氏がトランプ氏との対決をどう戦略づけていくのか、であります。
バイデンVSトランプとなればウクライナの恨みが双方ぶつかり合い、アメリカ国民も相当ヒートアップした支援合戦をするとみています。トランプ氏はバイデン氏を最も嫌な相手だと思っているわけですが、今日はバイデン氏側から見たトランプ氏追い落とし策を考察したいと思います。
まず、私がまず指摘したいのは経済のトランプは失敗したかもしれない、という見方であります。FRB議長にパウエル氏を任命したのはトランプ氏。いくら何でもひどすぎたというのが一つ目。次にアメリカが石油を輸出するほどにしたけれどアメリカのシェールオイル産業は崩壊の直前であります。次のOPEC会合で減産発表せず、原油価格に回復が見られない場合シェールオイル業界は壊滅的打撃を受けるはずですが、OPECはそれを目指しているように見えます。
国民生活も景気が良いといわれるのに物価高で本当に満足した生活ができているのか、と疑問符を挟んでいる人もいるのでしょう。つまり、中流を境にした経済への不満も見て取れます。
医療保険はどうでしょうか?今年のインフルエンザが大流行し14000人にも及ぶとされる死者が出た理由の一つは医療制度があってもないようなものだからです。「お金がかかり過ぎて病院に行けない」「会社勤めするのは医療保険に入るため」というのはアメリカのボイスです。トランプ大統領はこれを放置しました。
外交はどうでしょうか?リーダーシップ不在です。G7の誰をとってもタクトを取って世界をリードできる指導者はいません。つまりバラバラに動いていることが今日の最大の問題であります。今、主要たる指導者、安倍首相やメルケル首相はゴールがチラチラ見えてきている中で本来であればアメリカがリーダーシップを取れる位置にあったはずなのです。が、トランプ大統領はあえてそれをしなかった、これが果たしてよかったのかどうかは議論の余地があります。
トランプ外交は全部中途半端な状態にあるという指摘もありそうです。中国との通商交渉、北朝鮮との取引、イラン問題、もっと言えば韓国の在韓米軍問題ももっと踏み込むかと思っていました。ベネズエラにはもっと締め上げると思っていたし、イスラエルとの絆をもっと深めると思っていたのにこれも半端。要は全体のピクチャーがなく、個々の損得勘定で過去3年強、走ってきているのです。これはバイデン氏が突き上げるには効果的だと思います。
そして最後、民主党下院議長のペロシ氏の怨念でしょうか?とにかく弾劾裁判になったということはアメリカの品格について問われたようなものであります。「我々は世界に自慢できるアメリカであるのか」、ここを押し出せるかが民主党側のキーであるように感じます。
今日はあくまでもバイデン氏側から見たトランプ氏の弱点に限ってみていますので「お前の議論は節穴だらけだ」とおっしゃる方もいると思いますが、本気で指摘しているのではなく、議論の吹っ掛け方とそれに対する国民の支持をどう煽っていくかという選挙戦の戦略である点をご理解いただければと思います。
トランプ大統領もそろそろ本気を入れていかないとブルームバーグ氏のように出遅れになる気がします。これからがいよいよ面白くなってくるところではないでしょうか?
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2020年3月5日の記事より転載させていただきました。