コロナショックによる経済状況の悪化で各自治体の税収に大きな影響を与えている。著者が議員を務める東京都中野区の予測では、令和2年度一般財源が840億円だったものが、コロナショック後の翌令和3年度は92億円の減収としており、10%以上の減少である。
一般財源というのは区の裁量で使えるもので、この財源の減少は区の運営に大きな影響を及ぼす。
リーマンショック後の一般財源の減収(詳細は後述)
今年度の歳入は基本的に昨年度の実績から成り立つため、コロナの影響は非常に小さい。つまり来年度の歳入は今年度の経済状況に大きく依存するため、来年度以降の税収は本当に厳しいとの予測である。
ただコロナ感染予防のための緊急的な支出があるためにコロナによる影響は実質今年度より出始めている。中野区議会において今後の財政状況およびその対応策について議論がなされた。
1. 特別区の財源構成
まず特別区の歳入の構成を簡単に説明する。
以下の左円グラフは令和2年度当初一般会計予算の歳入の内訳を示している。そのうち特別区税は中野区民から直接区にお支払いいただく住民税である。
特別区交付金は東京都に収められた固定資産税、市町村民税法人分及び特別土地保有税の3税を23区の状況に合わせて23区に分配する税である。
国・都支出金は名のとおり、国と都からの補助金等であり、まちづくり、公共施設整備の際に国・都から補助金が望める。
しかしプラスだけではない。
例えば、歳出の健康福祉費300億円中の約170億円は生活保護費であるが、生活保護費の4分の3は国費、4分の1は各自治体の持ち出しで、つまり生活保護の国の支出金は約130億円、中野区の持ち出しは約40億円である。
自治体の財政の観点から言えば、持ち出し4分の1を支払うことはできれば回避したい。
税制度は複雑であるため、詳細な説明を省くが、財源は大きく分けて2つ、「一般財源」と「特定財源」がある。
「一般財源」は使途が制約されず、どのような経費にも使用でき、「特定財源」は使途が特定されている、つまり紐付きの財源である。
ここで「一般財源」は特別区税、特別区交付金、地方消費税交付金・利子割交付金等で構成される。「特定財源」は基礎自治体の努力では如何ともしがたいため、本稿では「一般財源」について論じていく。
2. リーマンショック時における特別区税、特別区交付金
リーマンショックにおいても各自治体は財政危機にあったため、当時の財政状況について説明する。
① リーマンショック時の特別区税
下図は中野区におけるリーマンショック前後の特別区税の推移である。
リーマンショックがあった平成20年(2008年)を基準にすると翌年度以降、減収し続け、ピークは3年後となった。平成23年(2011年)には東日本大震災もあり、リーマンショック以前に回復するまで5年間を要した。
② リーマンショック時の特別区交付金
同様に下図の特別区交付金の推移をみると、リーマンショックの2年後が減収のピーク、以前の税収に回復するまで5年間を要した。特別区税同様、回復まで5年間かかっている。
※特別区交付金の算出方法
各区の特別区交付金=基準財政需要額-基準財政収入額
基準財政需要額:人口、学校数、生徒数、道路面積、公園面積等から算出
基準財政収入額:特別区税、交付金、地方譲与税等の合計値ただし基準財政需要額は固定資産税、市町村民税法人分及び特別土地保有税等からなる調整三税等の金額に応じ算出方法を変更する。
③ リーマンショック時の一般財源
下図にリーマンショック時の一般財源の推移を示す。前述のとおりリーマンショックの余波は2年後にピークがある。
しかしリーマンショックは平成20年(2008年)9月15日のリーマン・ブラザーズの経営破綻をきっかけで時期は年度の中頃、また日本経済へ大きな影響を与えるまでのタイムラグを考えると、2年後に減収のピークがあることに説明はつく。また経済の回復基調の時期に発生した東日本大震災は大きな影を落とした。
リーマンショック以前に税収回復するまでに一般財源は242億円の不足となった。
一方、4月16日に緊急事態宣言を発出したコロナショックは来年度がピークである可能性はあるが、どうなるかは誰も知る由もない。
(下)ではコロナショックをどう和らげるか、具体的な試算と共に考えてみたい(リンクはこちら)。