夫婦が離婚する時に子どもの親権がどちらか一方にだけとなる「単独親権制度」によって、子どもと会えなくなるなどして精神的なダメージを受けたとして、子どもと引き離された経験を持つ父母6人が、こうした制度を存続させている国を相手取り、21日、慰謝料として150万円ずつ計900万円を求めた国家賠償請求訴訟を東京地裁で起こした。
離婚時の親子の引き離しや共同親権に関する国家賠償請求訴訟の動きは、2018年から沸き起こり、これで5件目。同様の訴えの動きは全国に広がっており、今後の国賠訴訟の連鎖が続きそうだ。
提訴後の記者会見では、離婚後に娘に会えなくなった原告の女性が「子どもがどんなふうに成長しているのか全然わからない。娘がどうなっているのか本当に心配。このような問題をみなさんに知ってもらいたい」と訴えた。
原告側の平岡雄一弁護士は、「憲法13条の幸福追求権には、両親が離婚しても、親子は親子であるというごく自然な『自然親子権』が保障されているはず」と主張。日本も批准している「子どもの権利条約」でも、子どもがその父母の意思に反して父母から分離されないことを確保するとしている。
だが、日本では民法819条によって夫婦のどちらか一方に親権を決める「単独親権制度」によって、離婚時に親権が一方だけに付与され、もう一方の親は、子どもと会えなくなり、連絡も取れなくなるなど、「親子の引き離し」が通例となっている。
原告側の小嶋勇弁護士は、単独親権制度は「憲法や、条約に違反する状態が続いており、この状態を放置し現在に至っている国会の立法不作為の違憲性・違法性を指摘したい」とこの訴えの意義について述べた。
近年、国際結婚の増加に伴い、日本人の配偶者に子どもを引き離される外国人当事者も増加。今年7月には、EU議会がこれについて非難決議を可決するなど、国際問題化している。
関連拙稿:「EUが日本非難!『子ども連れ去り』を止める法改正を」
実の親であっても、子どもを連れ去りもう一方の親と引き離すことは明確に違法とし、離婚後の共同養育計画書の提出を義務付けるなど、法改正を含めた早急な対策が求められている。
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これまでの共同親権 / 子の連れ去り関連集団訴訟は以下の通り。(参考:作花共同親権訴訟 )
1. 面会交流違憲立法不作為集団訴訟
【経過】2018年3月8日東京地裁提訴、2019年11月22日棄却(前澤達朗裁判長)、2020年8月13日東京高裁棄却(白石史子裁判長)【代理人】上野晃弁護士【原告】14名
2. 共同親権訴訟(離婚後単独親権違憲訴訟)
【経過】2019年3月東京地裁提訴【代理人】作花知志弁護士 【原告】1名【次回期日】2020年11月11日(水)午前11時~ 東京地裁526号法廷
3. 養育権侵害国家賠償請求集団訴訟
【経過】2019年11月東京地裁提訴【代理人】稲坂将成弁護士・古賀礼子弁護士・富田隼弁護士【原告】12名【次回期日】2020年12月10日(木)午前10時~東京地裁803号法廷
4.【作花家族法訴訟②】子の連れ去り違憲集団訴訟
【経過】2020年2月東京地裁提訴【代理人】作花知志弁護士・大村珠代弁護士 【原告】14名【次回期日】2020年11月18日(水)午後1時30分~東京地裁626号法廷
5. 共同親権国家賠償請求集団訴訟
【経過】2020年10月21日東京地裁提訴予定【代理人】小嶋勇弁護士 ・佐田理恵弁護士・平岡雄一弁護士【原告】6名
6. 自由面会交流集団訴訟
【経過】2020年11月11日提訴予定【代理人】作花知志弁護士 【原告】十数名