超過死亡と接種後死亡について再び考察(中編)

blackred/iStock

前編では、超過死亡のダッシュボードの見方について解説しました。

特に重要なことは、

[超過死亡数]=[累積グラフの超過死亡数]-[累積グラフの過少死亡数]

という点です。

この観点より、過去のマスコミの超過死亡の報道を検証してみます。

朝日新聞で1~5月の超過死亡は全国で5076~2万4300人と報道されました。NHKでは、1~7月の超過死亡は全国で6352~3万4483人と報道されました。これらの数値が、正しいかどうかについて、検証します。

1月~5月の超過死亡数は、4795~24807人より、過少死亡数の330~7493人を引いて、4465~17314人となります。報道の、5076~24300人とは大きく異なります。引く前の数値も報道の数値と異なっていますが、これは毎月データが追加される時に、過去のデータも補正されるためです。

1月~7月の超過死亡数は、6465~35363人より、過少死亡数の337~8340人を引いて、6128~27023人となります。報道の、6352~34483人とは大きく異なります。

数値が大きく異なるのは、過少死亡数を引いていないためです。

では、朝日新聞やNHKは、なぜ間違った数値を報道してしまったのか?

それは、厚生労働省の専門家会合で提出された資料の数値をそのまま使用してしまったためです。その資料を引用してみます。

赤枠の数値が1~5月の超過死亡数であり、朝日新聞の報道と一致します。専門家会合の資料の数値も、過少死亡数を引いていない数値だったのです。

赤枠の数値が1~7月の超過死亡数であり、NHKの報道と一致します。1月~5月のデータと同様に、専門家会合の資料の数値が間違っていたのです。超過死亡のデータは、国立感染症研究所が監修しているはずであり、何故このような初歩的ミスを犯しているのか、理解に苦しみます。

これまでの話を、表にまとめました。マスコミ報道や専門家会合の超過死亡数は、過少死亡数を引いていない数値であり、間違った数値であることは明白です。

「超過死亡数」という用語を、週毎グラフと累積グラフとで、異なる定義で使用したことが、そもそもの間違いの元でした。累積の方は、本来とは異なる意味で使用していますので、「累積超過死亡数」などの別の用語を使用するべきでした。資料作成した担当者が、累積の「超過死亡数」の定義が特殊であることを認識していなかったため、専門家会合の資料の数値が不適切なものになってしまったと推測されます。

最後に、国立感染症研究所では、何故このような誤解を招きやすい設定を採用したのかについて考えてみます。

次の2つのパターンを想定してみます。

  • パターン1:1月の超過死亡数1000、2月の超過死亡数-1000
  • パターン2:1月の超過死亡数ゼロ、2月の超過死亡数ゼロ

この場合、1月~2月の期間の超過死亡数は、どちらもゼロとなってしまいます。精密な分析では、パターン1とパターン2は区別される必要があります。そのために、累積のグラフでは、超過死亡数と過少死亡数とに分離されて集計されているわけです。

以上で、中編は終了です。

後編では、超過死亡とワクチン接種の関係について論じる予定です。

(後編へつづく)

【関連記事】
超過死亡と接種後死亡について再び考察(前編)

【お知らせ】
「小児のコロナワクチン接種推進に疑義を呈する」署名活動が始まりました。小児科の教授、名誉教授が賛同している真摯な署名活動です。小児の接種に疑問を抱いている方は、一度ご覧ください。