誤発行が相次いだ住民票の写し等のコンビニ交付システムの運用停止をデジタル庁が要請した。富士通が開発したシステムは全国約200の地方公共団体で利用されており、今後、点検を進めるそうだ。
いつでも、どこでも、かんたんに証明書が入手できると、総務省や地方公共団体情報システム機構は宣伝してきたが、ここにきて躓いた。
僕は5年以上前にコンビニ交付をやめるように提言する記事をアゴラに書いた。「コンビニ交付の普及よりも、証明書の交付不要を進めよう」である。
証明書の多くは他の行政機関に提出されるために発行されているので、行政機関間でマイナンバーを利用した情報連携ができるようにすればよい、というのが記事のポイントだった。
どこかに提出するために人々は住民票の写しなどの証明書の発行を求める。行政機関に出向いて証明書の発行を求める手間を解消する「部分最適」のDXとして、コンビニ交付システムは開発された。
それでは、どこに提出しているのだろうか。証明書の提出先や利用目的に関する統計はほとんど見当たらない。必死に探して横浜市による2008年度調査を引用して先の記事を書いた。今日改めて統計を探したが、以前と同様見つけられなかった。
証明書の提出先と利用目的が統計的に把握できれば、頻度の高い提出先との間で情報連携システムを作ればよい。提出先が本人確認を目的としているのであれば、証明書ではなくマイナンバーカードで本人確認すればよい。
こうして証明書の発行枚数は減っていき、最終的にはコンビニ交付は不要になる。これが「全体最適」のDXだが、政府も地方公共団体もそのように考えていなかった。
河野太郎大臣は「個人情報保護に関して国民の皆様の信頼を傷つける大変重大な事故で、誠に申し訳なく思う。点検に自治体にもご協力いただくようお願いし、事業者の管理体制についてもしっかり確認を進めていきたい」と話したそうだ。
しかし、河野大臣の仕事は謝ることではない。コンビニ交付を廃止する制度改革を検討し、推進してほしい。