米国連邦取引委員会がアマゾンを提訴した。アマゾンプライムに会員登録するようにいつの間にか誘導され、解約したくても面倒な手続きを強いられる。消費者に不利なサイトの仕組みが問題とされた。
「ダークパターン」と呼ばれるこの仕組みも問題だが、そもそもアマゾンプライムの利用規約もわかりにくい。日本語版のAmazonプライム会員規約にはこんな一文がある。
無料体験会員は、無料体験期間中いつでも、Amazon.co.jpのアカウントサービスを通して無料体験期間の終了後は会費を負担するプライムショップの会員登録をしないという選択をすることが可能です。
「無料体験期間中に停止しないと自動的に有料会員に移行します」となぜ書かないのか。なぜ利用規約はわかりにくいのか。弁護士に聞いたところ、消費者向けではなく、裁判官向けに書かれているからだ、と回答があった。
消費者が訴えても「利用規約を読み間違えた消費者が悪い」と抗弁できるように、利用規約はますますわかりにくく長文になっていく。一方、消費者は利用規約を読まずに「同意」ボタンをますます押すようになり、裁判で負ける。
欧州では先般EU Digital Services Actが成立した。消費者の基本的権利の保護が法の目的である。この法に基づいて、2023年4月25日、欧州委員会はプラットフォーム事業者に次のように要求した。
プラットフォーム事業者は事業を営む加盟国の言語を用いて、利用規約の要約を、ユーザが理解できる形式で、プレインランゲージを用いて、提供する必要がある。
短くわかりやすい要約によって消費者の最低限の利益は守られる。他方、プラットフォーム事業者は長文の利用規約を使って抗弁することになる。
わが国の民法には定型約款の規定があり、消費者は長い長い提携約款を読んで契約したと自動的にみなされると規定されている。利用規約は定型約款の一種である。欧州のように消費者保護を強める改正が必要だ。
ところで、欧州法が言及したプレインランゲージとは何だろう。これについては次の記事をお楽しみに。