コロナワクチン接種後死亡事例の解剖数を増やせば因果関係認定例は増加するか?

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コロナワクチン接種後死亡者の解剖の実施率は約1割と朝日新聞で報道されています。今回は、解剖の実施率を評価し、解剖の意義について考察してみます。

厚労省が公開している接種後死亡者の報告事例一覧よりVBAを用いて集計すると、mRNAワクチンの接種後死亡者は、2023年7月28日公開分までで2072人で、解剖が実施された事例は243件でした。したがって、解剖が実施された割合は11.7%でした。

接種後死亡者の年齢分布のグラフを作成しました。

次に、解剖が実施された接種後死亡者の年齢分布のグラフです。20~49歳ではモデルナの割合が高くなっています。

同じデータを男女別に表示したグラフです。

注目すべきは、60歳未満、特に40歳未満で男性の割合が極めて高い点です。40歳未満の事例の解剖で判明した死因は、心筋炎11件、不整脈5件、心不全5件、不明5件、サイトカインストーム3件、心突然死3件、循環不全3件、その他5件で計40件でした。心筋炎の割合は想像したより低く28%であり、40歳未満の男性には心筋炎以外にも重大なリスクがある可能性を示唆しています。

最後に、年齢別の解剖実施割合のグラフです。10代、20代、30代では40%を超えています。

接種後死亡者の剖検率(解剖の実施割合)11.7%は低いのか?

公表されている病院の剖検率を調べてみました。済生会滋賀県病院:1.9%(2021年度)、佐世保中央病院:2.0%(2020年度)、岐阜県立多治見病院:2.3%(2022年度)、藤田医科大学病院:1.6%(2021年度)でした。

厚労省の調査(2017年度)では、8412病院のうち剖検を実施している病院は1324施設で、剖検率1.6%でした。病院機能評価データブック(2012年度)によると、自施設による剖検率は、平均4.0%、中央値2.3%でした。

以上のデータより考えますと、接種後死亡者の剖検率11.7%は決して低いとは言えません。特に10代~30代は剖検率は40%以上ですから、むしろかなり頑張って剖検が実施されていると言えます。

剖検率および剖検数を現在より上昇させることは可能か?

剖検数を増やすことは現実にはかなり難しいと考えられます。何故ならば、病理医の数が足りていないからです。司法解剖が実施される場合もありますが、法医学を専門とする医師も足りていません。なお、司法解剖の場合は遺族の承諾は不要ですが、病理解剖の場合は遺族の承諾が必要です。

2017年の記事ですが、30年で病理解剖(剖検)は7割減少したと報道されています。ただし、接種後死亡者は接種3回目以降は激減していますので、分母が減少した結果、剖検率が上昇する可能性はあります。

剖検数が増加すれば、α評価事例数(因果関係が否定できない)は増加するか?

剖検した方が望ましいのは確かですが、剖検により大幅にα評価事例が増加するとは、私には思えません。剖検ではっきりするのは死因です。剖検により、突然死や心臓死の事例のなかに心筋炎の事例が見つかる可能性はあります。しかし、因果関係まで判明することは、ごく一部の事例にとどまると考えられます。

α評価事例を増やすにはどうするべきか?

以前公開した論考で指摘したように、疫学的研究や免疫組織化学的研究などの特別な研究的手法が必要です。どちらもマンパワーが必要であり、予算措置も必要です。厚労省は、これらの研究に積極的に取り組むべきであると、私は考えます。