人生を不幸にする思考のクセ4選

黒坂岳央です。

筆者は脳科学、心理学関係の書籍を読むのが好きだ。その中でどんな本にも共通して書かれていることがある。それは「人は認知の歪み、思考のクセを持っており、真実あるがままで見ることができる人はほぼいない」という主張である。そしてこう続く。「ある程度の歪みは誰しも持っているものだが、問題は人生を不幸にする類の強い歪みを持っている場合だ」という。

今回はその特徴を取り上げたい。

tadamichi/iStock

1. 白黒思考

SNSではみんながそれぞれの持論を展開している。時に発信者同士が「自分の意見こそ正しい」と言い合ったりしている。ウケるのは白黒ハッキリした結論だ。

それにより、昔はファジーなままでいた認知が、現代はなんでも白黒ハッキリつけられることが多くなった(ように見える)。それに慣れた人々は物事を白黒、0-100でわかりやすい結論を求める変化が起きたように感じる。今後の社会動向などについても、根拠なき楽観論か非現実的な絶望論のどちらかばかりが議論されているのではないだろうか。

しかし、世の中に白黒ハッキリつけられていることなどなく、ほとんどはグラデーションのように真実は「どちらかといえばAよりBの可能性が高い」という程度でしかない。つまり多くの議論はそもそも結論を出すことができず、賛成派・反対派にわかれるだけである。よしんば科学の分野でたくさんの論文が出ている場合であっても、テクノロジーの進展によって後から真実がひっくり返されることも数多く存在する。うさぎとびで体を鍛えるとか、酒は百薬の長といった意見もその好例である。

白黒思考の持ち主は強固な思い込みによって、対極の意見は一切入らない事が多いため周囲の人からも「この人にいっても伝わらない」と離れてしまう。そうなればますます偏重的に自分の望む情報を収集するので症状は悪化する一方だ。シンプルに損をすることが多くなるので改善が望まれる。

2. 飛躍的思考

次は「言ってないことを読み取り、言ったことを曲解する思考」である。SNSだけでなくリアルの場でもよく見られる思考であり、夫婦の会話で「今日はもう掃除した?」と事実確認なのに「自分が掃除をちゃんとしていないと言いたいのか!?」と激昂するといったケースである。

先読みがすぎると人間関係でトラブルの原因になる。自分は記事や動画を出す立場なので「本当はこう言いたいんでしょう!?」「自分をバカにしたいんでしょう!?」と怒られてしまうことがあるが、話をよく聞いてみると99%が誤解である。「あなたの心理など、こちらは全部お見通しだ」と言わんばかりの勢いで来られることもあるが、こちらからするとまったく見当違いで、なぜ赤の他人から自分は怒られているか不思議に感じてしまうことも多い。

周囲の人からは「勝手に期待し、勝手に裏切られたと怒り出す面倒な人」という印象を与えるので注意が必要である。FBI捜査官や心理学者ではない一般人に、他人の気持ちを正確に先読みすることなど不可能だと考えた方がいい。9割以上は自分の思い込みである。

3. べき論思考

次は「こうあるべき、こうするべき」という押しつけ思考である。「お金を払った側がえらい」とか「このくらいやってくれて当然でしょ」といったその人独自の価値観を相手に押し付ける思考である。

べき論思考の持ち主の誤りは「他人は自分の意志でコントロールできる」と考えてしまっている点である。他人と過去は変えられない固定値なのに、まるで変動値であるかのように勘違いをしているのだ。変えられないものを無理に変えようとすると、相手からの反発や思い通りにいかずイライラしてしまうだけである。

周囲の人からも「こちらには高い期待を押し付けるくせに、肝心のあなたはどうなのか?」と悪印象を与えるだけなので損をしてしまうだろう。

4. カテゴライズ思考

最後に何でもかんでもわかりやすく分類しないと気がすまない、レッテル貼りをしてそれ以降の思考を完全に停止しまうカテゴライズ思考である。

「人生は親ガチャで100%決まる」「自分は日本に生まれた時点で負け組」「大阪生まれの男性は全員暴力的」このように強い思い込みと偏見で決めつけてしまい、自分の考えが正しいと固執する。違ったケースを見ても「これはたんに例外に過ぎない」と間違いを認めようとしない。

この思考の問題は、選択肢や思考力を極端に狭めてしまう点にある。「優秀な人はみんな東京にいるので、地方には上京できなかった行動力のない保守的な人間しかいない」たとえばこのように思考して地方そのものを見下して活躍の場から排除して東京で勝負することだけに固執してしまったりする。しかし、現代のようにリモートワーク環境が整った今、優秀で独力で場所を選ばず付加価値を創出することができる人材になれば、むしろ地方で勝負する方が低コストでQOL高く生活できる選択肢もあり得る。

筆者自身、恥ずかしながら昔は「仕事は都会いったく。地方に魅力的な仕事なんてないのでは?」という思い込みを持っていたが、起業して地方に移住した今は「場所を選ばず働ける時代に必ずしも東京だけが正義ではない。驚くほどとびきり優秀な人は意外なほど地方にいる」という新しい視点や柔軟性を得られたように思う。

思考は生まれつきではなく、後天的に獲得する要素である。性格を後から変えることは難しいが、価値観や思考はいつからでもアップデートできる。自分は30代で起業する前と後とでは「180度違う」と思えるくらい真逆の価値観や思考を持っていた。思考が変われば習慣、そして人生を変えてしまうほどのインパクトがある。せっかくなら悪い思考を捨てていい思考を取り入れたいものだ。本稿を反面教師として何からの気づきの機会にしていただけると幸いである。

 

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ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。