ハリスはメディア露出度が増えるほど支持率が減る

これまで『ABC』や『CBS』など親ハリスのメディアばかりで、トランプ寄りメディアのインタビューを避けて来たカマラ・ハリスが16日、ついに『フォックス・ニュース(Fox)』のブレッド・ベイヤーと相対した

その内容は後に述べるとして、先ずは同じ日の『Fox』の「トランプ・ヴァンス候補は8月以降、合計79回のインタビューを実施しているが、ハリス・ウォルズ候補は44回である」との記事について触れる。

というのも筆者は8月13日の拙稿「ハリス/ウォルズの「honey moon」は投票日まで続かない」で、今後投票日までに「掘られる」「悪材料の質と量」は、「この7年半にほぼ出尽くしているトランプに比べ」、「ハリス/ウォルズ陣営の方に圧倒的に多い」、「ハリス批判の材料はカリフォルニアの司法長官⇒上院議員⇒バイデン政権VPの期間を通して、『国境担当皇帝』を筆頭にうんざりするほどある」と書いたからだ。

バイデン降ろしで唐突に民主党の大統領候補になって以来、「honey moon」のご祝儀相場でトランプを凌駕して来たハリスの支持率がこのところ下降している。『ニューヨーク・タイムズ』の15日の記事では、接戦7州のうちアリゾナでトランプが2%リードし、他の6州でも1%以内の差で接戦との結果となっている。他の調査もほぼ似たり寄ったりの結果だ。

これは良く知られた話だが、日本で都市と地方で支持政党に差がある以上に、米国では都市居住者に反トランプが多い一方、郊外居住者や大卒でない白人層にトランプ支持者が多い。トランプ支持と公言するのを憚る風もあり、16年にトランプ当選を当てた調査団体「トラファルガー」は「「あなたの知人はトランプを評しているか」という手の込んだ質問で本音を引き出した。つまり、ハリスの優勢が1%程度である場合、実はトランプの方が優勢という訳である。

インタビューの数に関する『Fox』記事に戻れば、8月初旬のハリス/ウォルズのコンビ誕生以降、トランプ/ヴァンスは79回のインタビューに応じている一方、ハリス/ウォルズの受けたインタビューは44回で、その大半はここ3週間だという。またトランプは8月以降、長時間の記者会見を6回行っているが、ハリスは未だに正式な記者会見を行っていない。

このことが何を意味するかといえば、ハリス/ウォルズがメディアに露出すればするほど、それに連れて支持率が下がるということであり、今後さらにその傾向が強まるということだ。トランプ並みに長時間の記者会見など行った日には、更にメッキが剥げて地金がもろに出かねない。我が総裁選でも似た事例の候補がいた。そのハリスは13日、インタビューを拒否した『タイム』のオーナーから「X」で、次のように激しく批判された

ハリス氏はこの件に関するインタビューの要請を繰り返し断った。対照的に、トランプ氏はタイム誌の記者と2回のインタビューで90分間、自身の政策ビジョンを語った。バイデン氏も選挙戦から撤退する前に、タイム誌に同様の長さで語った。ハリス氏は他の大統領候補と違い、タイム誌のインタビューを許可しなかった。私たちは透明性を重視し、インタビューは全文を掲載する。なぜ副大統領は国民と同等のレベルで関わっていないのか? #信頼が重要 #透明性が重要 #リーダーシップ。

※「この件」とは「カマラ・ハリスはどんな大統領になるか?」と題したタイム誌の記事のこと。

「X」が「インタビューの全文掲載」に触れたのは、『CBS』の「60minutes」でハリスの録画インタビューを編集したばかりでなく「Face the Nation」が放送した共和党ジョンソン下院議長の録画インタビューでも彼の回答を編集したことに関係する。

後者で『CBS』はバージニア州の不法移民名簿削除や有権者資格保護法、ノースカロライナ州でのハリケーン・ヘレンの被災者に対するバイデン政権の対応、選挙の公正性などに関するジョンソン氏の回答を編集した。

「X」にポストしたオーナーのマーク・ベニオフ氏は90年代以降、民主党に80万ドル以上、共和党に約30万ドルを寄付している。同氏は今回の選挙ではどちらの大統領候補にも寄付していないが、2019年にはハリス氏に寄付している民主党のシンパだ。

そこで700万人が視聴したベイヤーのインタビューのことになる。筆者は例によって日本語字幕で拝聴したが、冒頭の質問から双方のゴチャゴチャは始まった。

ベイヤーは、バイデン/ハリス政権が入国を許可した不法移民の人数を問うた。が、ハリスは頻繁に「顧みて他をいう」(答えに窮し、間を空けて本題とは違う答えをいってごまかす)を繰り出し、「ブレット、本題に入りましょう。いいですか? 要点は我が国の移民制度は崩壊しており、修復する必要があるということです」と決して数字をいわない。

ハリスは「(バイデンの大統領就任の)宣誓後、実質的に数時間以内に提出された最初の法案は移民制度の改善に関する法案だった」といい、ベイヤーは「それは『2021年米国市民権法』と呼ばれている」と述べ、ハリスは「その通りだ」と答えるが、ベイヤーは「それは本質的に市民権への道だった」と述べた。ハリスは「法に基づいている」というが、その「法」は600万もの不法移民に容易く市民権を与える「悪法」だ。

ベイヤーが「有権者の79%がこの国が悪い軌道に乗っている」との調査を示し、「貴女は3年半も政権に居ますね」と問うた時には少し言葉に詰まり、「トランプも立候補していた」と述べてから「彼は集会で国民を軽視する発言をする」などとトランプ批判を激しく繰り返した。

バイデンの能力低下に「いつ気付いたか」との問いにも一瞬間を空けて「大統領執務室で見て来たが、彼は判断力と経験を持っている」と答え、ベイヤーに「彼は投票用紙に載っていない」と切り返される始末だ。

こうした「ハリス構文」は「word salad」(文法的には正しくても意味が支離滅裂な話や文章のこと)と揶揄されている。例えばハリスはベイヤーに対して次のように述べる。

トランプは平和的な抗議活動に参加している人々を攻撃すると発言した。彼は自分の意見に反対する人々を投獄すると発言した。米国は民主主義国家だ。そして民主主義国家のアメリカ合衆国大統領は、批判に対処する用意があるべきであり、批判に対して投獄するとは言わないべきだ」と述べた。

が、多くの米国民が見ているのは、バイデン/ハリス政権の「司法武器化」のためにトランプが複数の裁判で三桁近い訴因で起訴され、また「1月6日」の事件に関与したとして1千数百人が投獄されている現状だ。聞く者は「どの口が言うのか」と呆れるのである。

21年7月の「米国障害者法」の制定記念日での演説ではこう述べた

公平(Equity)とは、誰もが持つべきものであり、平等(equal)に扱われるべきものです。しかし、公平とは、誰もが同じ土台からスタートするわけではないということを理解しているのです。全員に同じ額を与えても、スタート地点が違えば、本当に競争して成果を上げる機会が得られるのでしょうか?

この発言は「意味が支離滅裂」な訳ではないが、まさに「結果平等」というマルキシストの主張であって、自由で実力主義の米国民が享受して来た「機会平等」の結果として得られる「アメリカンドリーム」という思想の否定である。物価が高いのは小売店が暴利を貪っているためなので下げさせるとも述べ、批判されて引っ込めたことも記憶に新しい。その口がトランプは民主主義の敵などと言えば、多くの普通の米国民が理解できないのも宜なるかな。

有権者の55%が選挙日前に投票するようだ。が、編集やプロンプターのない更に多くの会見やインタビューに晒されるこの期間は、政策は変えても「価値観は変っていない」と述べる「word salad」のハリスと直ぐバレる嘘をつく「嘘つきティム」ウォルズにとり、「honey moon」どころか支持率が欠けて「三日月」に向かう日々になりそうだ。45%は11月5日に投票する。