私は維新にたいへん大きな期待をしてきたし、いまも現在より勢力を拡大して欲しいと考えている。
どうして維新を評価するかと言えば、自民党的な政治に対する健全な対立軸として、社会党的な左派路線にかわるのは維新的な改革路線しかない、あるいはそれを加味したものでなくてはならないと思うからだ。
私は左派というか、社会党的な路線の歴史的役割を高く評価している。自由放任路線でなく、日本が社会福祉国家としての道を歩については、左派がそれを主張し支持されたので、自民党もそれを放置できなかったことは否めないからだ。
しかし、高度成長が終わって財源問題がゆえに、限界に達している。となると、無駄を排除することもしないと辻褄が合わない。ところが、労組に支配されている左派政党ではそれができない。一方、自民党も既得権益の守護者であることに違いはない。
そのなかでは、左も右も両方の利権にしがらみなしに切り込んでいくような維新の論戦は合理性があるからだ。
そして、それが大阪でまず成功したのは偶然でない。なぜなら、大阪では人情に満ちた行政が行われて、たとえば、対象とすべきかどうか怪しくても、「ええやないか」でどんどん行政が肥大していたからだ。
こうした改革を武器にした新興勢力は世界的にもみられ、典型がフランスのマクロン大統領で、社会党改革派から出発して、中道派、保守政党内の改革派、環境派を糾合して、社会党と共和党の中間に第三勢力をつくって大統領選挙で勝ってしまった。
それと同じように、いまや自公に対抗できる代替政権担当政党をつくろうとすれば、維新的な路線と国民民主党的な路線が融合するしかなく、さっさと立憲民主党を野党第一党の地位から引きずり下ろしてほしいと思ってきた。
それは前回の参議院選挙では比例の得票数で維新が上回るなど希望が見えていたのだが、古い左派が自民党のスキャンダル追及で息を吹き返して頓挫して、維新が野党第一党になるのは先のことになりそうだ。
また、維新自身が迷走しているのもたしかだ。
そんななかで、維新のなかで「青い正論」を個性的に言い続けた足立康史前議員が東京15区補選での運動に問題があるのでないかと内部告発したのを反党行為といわれ、東京の維新の一部の圧力もあって排除され、しかし、せめて対立候補は立てないとみられていたのに、刺客を立てられた。
そこで、不意を突かれた足立氏は党内で改革を呼びかけることを諦めざるを得なくなり、立候補断念した。
そして、今回、維新に刺客を立てられた公明党の4つの選挙区で、主としてネット上であるが、公明党候補にエールを送り、また、一部の自民党候補にもそれより控えめだが同様だ。
どうして公明党なのかといえば、大阪の四つの小選挙区から出馬している、3区の佐藤茂樹氏、5区の国重徹氏、6区の伊佐進一、16区の山本香苗氏が公明党でもことさら質のよい候補者であるということがある。
3区の佐藤茂樹氏は防衛問題について、平和主義の基礎に立ちつつも、実質を重んじた議論ができる政治家で小野寺五典氏の盟友として知られる。伊佐進一氏は厚生労働副大臣もつとめた福祉のプロであるし、東京大学航空宇宙学科を卒業した元文部科学官僚だ。山本香苗氏は元外交官で引退する北側前副代表の地盤を引き継ぐ。北側氏は憲法や皇位継承問題で公明党の最高責任者を務めてきたが、それを補佐してきたのが弁護士の国重徹氏で北側氏と彼とがいなくなるとこれらの問題が進まなくなりそうだ。
国重氏のことは、かねてから足立康史氏も高く評価してきたらしく、YouTubeで維新の問題点を語るのに、かれを対談の相手に選んで、「大阪は維新に騙されている」という動画が本日の朝公開された。
そのなかで、取り上げられているのは、ひとつは、政治改革で、維新が企業団体献金をもらわないと言ってきたのが、かなり抜け穴だらけであることが解き明かされている。
また、福祉については、高齢者の窓口負担三割という維新の公約が、音喜多政調会長の軽率な発言から出たものであり、また、それを進めたのが、医療改革タスクフォースのヘッドを務めた梅村聡氏(今回の総選挙で衆議院に転出し国重氏の対立候補)が事務局長だった足立氏の忠告を無視して突っ走ったことが赤裸々に語られている。
また、今回の選挙で維新は、消費税の減税を唱えているが、これに猪瀬直樹参議院政調会長が組織に諮られていないから取り消すべきだと抗議していることも紹介されている。
これに限らず、いまの維新はガバナンスが緩すぎる。不祥事続発について、身体検査など今の世の中で限界があると開き直っているが、候補者の身体検査の緩さも、発覚したときに精査もせずに蜥蜴の尻尾切りするのも極端に過ぎる。
いま、維新は大阪以外で人気が上がらず、せっかく163人もの候補を立てながら、見捨てられたも同然だが、そのなかには、かなり質の良い候補もいる。私は大阪で欲を出しすぎているのは将来的に賢くないと思うし、逆に若く有望な新人たちの芽が潰れないように奮起を期待しているが、そのあたりは別の記事で明日でも書きたい。
いずれにせよ足立氏と国重氏の動画は10数分だが内容は濃い。ぜひ、ご覧になることをお勧めしたい。
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