新聞報道によって受けた被害はどのようにしたら救済できるだろうか。新聞の自由,責任,水準を維持するために、英国には自主審査機関Independent Press Standards Organisation(IPSO)がある。1953年設立の新聞評議会(press council)の後継組織である。
わが国にも、放送業界にBPOがあるように、同様の組織は作れないだろうか。1月16日、制度・規制改革学会でこの問題について非公式に議論した。
読者数が急減しつつある新聞業界に、今さら自主審査機関を設けるように求めても実現は困難。むしろ、各新聞社の読者委員会を強化するほうが現実的という意見が学会参加者の中では強かった。
驚いたことに、毎日新聞と朝日新聞には読者委員会があるが、読売新聞にはないという。毎日新聞には「開かれた新聞委員会」があり、社外有識者で構成され、記事による人権侵害を監視するのが主要機能である。同様の機能が、なぜ読売新聞には存在しないのだろう。
学会ではメディアスクラムも話題になった。兵庫県政に関する報道については、日本新聞協会の内部でも議論されたそうだ。知事選挙期間には報道できることが限られているため、誤情報も含むSNSを通じての情報流通にオールドメディアは対抗できなかった、と結論したそうだ。
これについて僕は次のように指摘した。
問題は選挙前の報道ではないか。「兵庫県知事は悪人である」という一方的な報道を夏ごろから重ねたことが県民に疑問を生み、多くの県民がSNSから情報を得るようになったのではないか。
誤報による被害については、各社個別の読者委員会が救済に乗り出せる。しかし、メディアスクラムは複数社にまたがるので、日本新聞協会のような横断的な組織が救済に動く必要がある。報道被害と大雑把にまとめて考えるのではなく、誤報とメディアスクラムのように分けて対策を考える必要があるというのが、僕の結論である。