昨年の出生者数が、68万6,061人であったことが発表された。前年の72万7,288人から、実に4万1,227人もの減少数であった。
日本、消滅へ…出生数68万人ショック、人口91万人減の悪夢。もはや打つ手なしか?
年末にはこうなることがほぼ予測されていたので、私の今年最初のブログ記事は、この話だった。
未曽有の人口減少の時代に模索すべき日本外交の姿勢 篠田 英朗

そこでも書いたことなので、繰り返すことは避けておくが、少子化を止めることは基本的に不可能である。そろそろ親世代の人口が激減する時代に入ってくる。出生率を低下させながら、出産適齢人口が減少する時代に入っていくのだ。どこまで出生者数が低下していくのか、見通すことすら、ほぼ不可能と言っていい、底なしの低下が続いていく絶望的な状況だ。
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/suikei16/dl/2016toukeihyou.pdf
頻繁にメディアで引用される、わずか二年前の国立社会保障・人口問題研究所の「日本の将来推計人口(令和5年推計)」での予測は、現実と大きく異なっている。二年前、同研究所は、出生者数の減少が突如として停止することを「予測」あるいは祈念していた。

https://www.mhlw.go.jp/content/12601000/001093650.pdf
「ウクライナは勝たなければならない」ので、ウクライナに不利になるニュースは配信しない、ロシアの崩壊を語る者だけをメディア出演させる、といった社会的風潮と、全く同じ様子に見える。
「子ども家庭庁」の評判が悪いが、当然だ。効果のないパフォーマンスに税金を使って、国民の生活水準を悪化させたうえで、財政赤字を拡大させて、未来への希望をさらにいっそう失わせていていくのは、愚の骨頂である。
今の日本に欠けているのは、未来への希望だ。子どもなど産んでいいのか、という雰囲気が蔓延している。政府は必死に「子どもを産んだら人生が楽しくなる(子どもの人生がどんなものになるかなど心配せず、あなただけが楽しめればいいと発想を変えって、直近の自分の楽しみのために子どもを産んでください)」といったノリでの広報を続けるが、効果がない。自分が産む子どもの未来を悲観しているので、出生率が低下している。

metamorworks/iStock
現在の日本の人口減少は、国家の消滅を危惧するレベルで進展している。われわれが考えなければならないのは、人類が経験したことがないようなレベルでの人口の大減少にさらされながら、どうやって社会を維持していくのか、である。それはひょっとしたら不可能なのではないか、という真剣な懸念を持ちながら、課題に取り組んでいく態度が必要だ。
だが残念ながら、実際のシルバー民主主義の現実の中では、未来の現実をふまえた政策が実施される可能性は乏しい。
徹底して悲観的になるべき状況である。
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