投資をしている方は大なり小なり「株が上がった!」と喜んでいる方が多いことかと思います。ただ、株というのは売って利益確定をしたところでようやく本当に儲かったと言えるわけでいつ売って利益確定させるか、これは買う時よりはるかに難しいと言えます。
日本の方も儲かっている方が多いと思いますが、北米の株式も乱舞しているセクターもあれば着実に歩を進めている銘柄もあります。そこで言えることは全面高にはなかなかならず、上がるセクターは限られる点です。また材料株と称する新しいネタが出たところは株価がゴムまりのようにすっ飛んでいき、短期間にして2倍高や3倍高を実現することもあります。
私は不動産賃貸事業という地味な仕事していますが、船の停泊料から月極駐車場料金、商業施設の賃料、シェアハウスの賃料、さらにはグループホームに至るまで、年間の値上げ幅は2-4%が限界で、無理して背伸びせず、空きスペースや空き室などテナントの穴をあけないようにすることに注力しています。なぜなら1か月空き室になれば8.3%(=1/12か月)の収益減になるのです。つまり無理して値上げしてテナントがそっぽを向いたら空きスペースという機会損失のほうがはるかに大きいわけです。
その点では私はどうやったら空きスペースを作らないかという非常に繊細なビジネスをしているとも言えます。日々の売り上げを大事にし、その積み重ねで1年経てばこれだけ収益があったという話をしているわけです。
それに比べると株式市場は確かにあぶく銭の世界であります。3-4%の収益を求めるだけでその気になれば1日で稼ぐことができますが、いくら儲かろうとそれを生業としたくないのはまるで空気を掴む話で何一つ、身につかないと感じるからです。
たとえば皆さんの数々の投資戦歴で思い出のトレードがあると思いますが、その思い出も結論からすれば「あの時は儲かったよな」「あの売りタイミングは大正解だった」といったことでその銘柄に感謝することはあまりないかもしれません。空気を掴む話とは結局、投資家の数々の戦歴とは銘柄選びと売り買いのタイミングをどうやって見つけるかであり、その銘柄に愛がある訳でもなし、バフェット氏のように好きな銘柄を死ぬまで持ち続けたいという方も少ないでしょう。
「熱狂する株式市場」とは正しい意味での投資ではなく、投機であると考えています。私が現在、手持ち資金の運用に困っているのは北米市場がまさにギャンブル状態で超短期ならば勝てるかもしれないけれど半年後の市場を想像できないがゆえに「買いたい銘柄がない!」という結果になるのです。
今の株式市場は日本もカナダもアメリカも材料相場と言えます。AIであったり高市トレードはその好例です。しかし、それを囃す市場はまだ果実を掴んでいないからこそ、より想像力が豊かになるとも言えるのです。AIを導入して儲かったという話はいまだに聞かないし、高市トレードと言っても我々にどのようなメリットがあるのか未知数であります。週明けは公明党の離脱により大幅な高市トレードの巻き返しが見込まれています。つまり投資家、いや投機家たちは夢追い人であり、各々がたくましい想像力のもと、「きっとこうなる!」と前向きの予想をすることで祭りムードになっているとも言えます。

高市早苗総裁インスタグラムより
冷や水を浴びせるようですが、冷静になって考えてみれば今の姿は「おかしいだろう」と気がつかないのは群衆心理がそうさせるのだと思います。
腹8分目という言葉があります。「君、儲かったか?」と言われたとき、何と比べるか、であります。預金金利と比べれば相対評価。〇〇万円を手にしたならば絶対評価。少なくとも後者は泡に近く、競馬で当てたのと変わらないのです。
基本は物価水準や預金金利、国債の利回りといったベース指標に対してリスク勘案分を上乗せするというのが正しい考え方です。あるいは企業経営者が企業収益を見た時、どれぐらいの利益が妥当か、といえば業種にもよりますが、5%が適正水準、10%を超えればかなり優良とされるのでそのあたりから類推できるかと思います。
私が妥当だと思う投資家が本来目指すべき利益水準は今の金利水準と比べると、3-6%程度なのだと思います。私が不動産投資をするとき、キャップレート5%を基準で計算しますが、これは投下資本を20年で回収するという意味であり、5%のリターンを求めているとも言えます。
そうやって冷静に考えるとわたしもそろそろ秋の収穫時期にしてもよいのではないかと思っています。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2025年10月13日の記事より転載させていただきました。






