2026年の米国の大卒就職市場は、21年以来の最悪水準に近づいている。景気後退が顕在化していなくても、若年層の雇用環境だけが深刻に悪化している点がその特徴である。
米国の大卒就職、26年はコロナ禍以降で最悪の見通し AI導入が背景https://t.co/DqDsDuNi8m
— 日本経済新聞 電子版(日経電子版) (@nikkei) November 14, 2025
AIの普及でホワイトカラーの入り口業務が急速に置き換えられ、「大卒=安定」の神話がついに崩れようとしている。
- 大卒就職市場の見通し悪化が鮮明
全米大学・雇用者協会(NACE)の調査で、2026年の就職市場を「良い」と答えた雇用主は37%と前年から10ポイント低下。「悪い」は6%で増加し、21年以来の低水準が示された。 - 米企業の人員削減は1〜9月で前年比55%増
調査会社チャレンジャー・グレイ・アンド・クリスマスによれば、企業のリストラが大幅に増えており、企業が新卒採用を絞る動きが広がっている。 - トランプ関税と持続的インフレで「不確実性」が拡大
関税の強化や物価高で企業は先行きに慎重になり、採用意欲が急速に冷え込んでいる。NACE担当者も「多くの企業は採用に慎重だ」と指摘する。 - AIが「若手ホワイトカラーの仕事」を根本から奪う構造が進行
これまで新人が担ってきたOJT的な定型業務や資料作成はAIが代替し、企業は経験者採用へシフト。米国では「大卒ホワイトカラーは余るが、配管工・空調整備士は年収1600万円」といった“ブルーカラービリオネア”現象さえ見られる。 - 大卒者の失業率が全体平均を上回り、新たな就職氷河期へ突入
AIによるホワイトカラー代替は景気循環とは関係なく進むため、大卒の就職難は構造問題となりほんとうの就職氷河期はこれから始まるとの見方が強い。コンピューターサイエンス専攻でさえ哲学専攻より失業率が高いとのデータも出ており、専門性の優位が崩れつつある。 - 日本でも同じ構造変化が時間の問題で到来
企業が新卒を育成する前提が崩れると、知能労働志向の若者は「より上流の仕事」「人を巻き込む仕事」「複数のタスクを統合する職務」といったAIなどに置き換えられないへ早期に移行せざるを得ない。
米国では、本格的な景気後退が表面化していないにもかかわらず、AIと不確実性の増大で、大卒ホワイトカラーが最も割を食う時代が本格化している。新卒採用の縮小は構造問題であり、従来型のOJT前提の育成モデルは崩壊しつつある。AIが新卒雇用の土台を侵食し始めることは、日本でも不可避の流れとなるのだろうか。

ハーバード大学のキャンパス 同大学HPより






