「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングが、新卒初任給を月額37万円に引き上げる方針を示した。金額の大きさが注目されがちだが、この動きは単なる高給競争ではなく、日本企業が抱える賃金と雇用の歪みに対し、同社なりの明確な回答を示したものといえる。
新卒初任給を上げるのはいいが、中堅どころとのバランスが難しい。
ファストリ、初任給37万円に4万円増 柳井氏「世界水準ではまだ低い」:日本経済新聞 https://t.co/stnKbTPWCS
— のとみい (@noto_mii) December 21, 2025
- ファーストリテイリングは、2026年3月以降に入社する新卒社員の初任給を37万円に引き上げる。2025年春比で4万円増となり、2020年以降4度目の引き上げである。
- 柳井正会長兼社長は日本経済新聞のインタビューで「世界水準ではまだ低い」と述べ、グローバル企業として賃金水準を引き上げ続ける姿勢を明確にした。
- 2026年春の新卒採用人数は約480人で、グローバルリーダー候補の年収目安は約590万円となる。初任給段階から国際競争を前提とした処遇設計である。
- 転居を伴う転勤を前提にしたグローバルリーダー候補は初任給37万円、地域限定社員でも28万円とされ、国内小売業としては異例の水準だ。
- 同社は2020年に初任給を25万5000円へ引き上げて以降、23年に30万円、25年に33万円と段階的に賃上げを実行してきた。好業績を人材投資に還元する姿勢は一貫している。
- ユニクロの社員への要求水準は決して低くないが、その点を隠さず、高い報酬と引き換えに高い成果と責任を求める設計は、むしろフェアだとも言える。
- 平均勤続年数が短いことや長時間シフト制といった厳しさはあるが、それは少数精鋭で事業を回し、成長機会を早期に与える企業戦略の裏返しでもある。
- 早期から内定を出し、学歴や在学年次に過度な意味を持たせない採用姿勢も合理的だ。大学受験の成否よりも、入社後に何を成し遂げるかを重視している。
- 多くの日本企業が賃上げに慎重なのは、解雇規制や社会保険料負担といった制度的制約があるためであり、ユニクロの賃上げは例外的な成功例でもある。
ユニクロの初任給37万円は、単なる話題作りではなく、世界で戦う企業としての覚悟の表れと言える。厳しさと高報酬をセットで提示し、若手に早い段階から大きな裁量を与える姿勢は、日本企業の中でも際立って戦略的だ。

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