
2026年初頭の衆議院選挙で、ほぼ全政党が「消費税引き下げ」という筋の悪い政策を主張する事態に至った。

専門家からはインフレ悪化と財政懸念から批判があがり、実際に長期金利が上昇している。そんな中チームみらいだけが消費税減税への慎重姿勢を示し、「社会保険料の削減」が急務と述べ、特にXにて称賛の声が上がった。
しかし私は同党が現役世代の積極的支持先にはなり得ず、注目は長続きしないという悲観を持っている。なぜそう感じたか、そして此度のチャンスを掴み存在感を確立するにはどうすべきか、との考えから本記事を認めるに至った。
チームみらいは消費税を理解していない
前提として、みらいの「消費減税はすべきではない」という主張には賛同する。
昨日のニコニコ生放送の党首討論にて消費税減税に関する考え方や財源についてお話をさせていただきました。チームみらいとしては、全てを実行することはできない中で、社会保険料の減額を優先すべきと考えています https://t.co/n6zzhbm485
— 安野貴博@チームみらい (@takahiroanno) January 25, 2026
しかし具体的な内容を検証すると、消費税に関するリテラシーに深刻な問題が見える。
「消費税減税より社会保険料負担軽減を優先すべき」としながら、条件によっては消費税の方を下げる余地があるかのような主張をしているのだ。
日本の社会保障制度は現役世代の社会保険料で高齢者給付を賄う賦課方式が柱であり、少しでも負担を分散させるため安定財源である消費税を組み込んでいる。深刻な少子高齢化の中、消費税を下げられるケースとは具体的に何を想定しているのか。
とぼけたこと言ってるんじゃない。それじゃ近畿以外では消費減税が必要なのか。消費税は地方税じゃなくて国税なんだよ。
チームみらいはアマチュア集団。他のバカな政治家へのアンチとして投票する意味はあるが、積極的に支持できない。 https://t.co/87wlXMugRm— 池田信夫 (@ikedanob) January 26, 2026
また別候補者は「近畿の産業構造を考えると優先順位を冷静に考える必要がある」と投稿していた(現在は削除)が、消費税は国税で全国一律なのに地域条件を理由に優先順位を語るのはナンセンスだ。
図解にしました😌#チームみらい https://t.co/8yQR56022L pic.twitter.com/X4smMK8AVo
— チームみらいGo (@Team_mirai_Go) January 20, 2026
決定的なのは、みらいが消費減税の代替として「軽減税率の対象を生活必需品に拡大する」という、極めて筋の悪い案を出していることだ。
消費税は単一税率で導入し、低所得者には給付付き税額控除で対応するのが最適というのが、マーリーズ・レビュー以降経済学界で確立された知見である。軽減税率は品目の分類や境界線の定義を極めて複雑にし、行政コストや事業者の事務負担を大幅に増大させると共に、消費者の商品選択を不自然に歪め、特定業界によるレント・シーキングを招く。
いわば行政・政党に無駄な「いじわるクイズ」の対応を延々と強いるようなもので、社会全体の効率性を大きく低下させる。「遅い政治を速くする」スローガンを掲げながら、政治をより遅くする改悪を提案するのは本末転倒ではないか。
加えて軽減税率の恩恵は高所得者にも及ぶため、所得再分配としても非効率だ。みらい自身が食料品消費税率0%案を「金持ち減税になる」と批判していたのに、軽減税率拡大も同じ問題を抱えている。明らかな矛盾だ。
さらに深刻なのは財源問題だろう。軽減税率対象拡大は実質的に消費減税と同じであり、大幅な税収減を招き、肝心の社会保険料負担軽減の財源が失われる。自らが掲げた優先順位と真逆の政策を提案しているのは、社会保険料負担と消費税のトレードオフを十分に理解していない証拠だろう。
単一税率から複数税率を導入した日本の消費税制度は、国際的に税制改革の失敗例であり、それをさらに拡大せよというのは税制の基本原則に対するリテラシーの欠如と言わざるを得ない。結局、みらいの主張は他党の減税ポピュリズムの変種にすぎず、曲がりなりにも単一税率を主張する国民民主党の方が、税制の原則論においては一貫性がある。
こうした状況を見ると、みらいの主張は一知半解によるまぐれ当たりで、ネットユーザーが抱く好印象は過大評価と言わざるを得ない。今は与党まで減税ポピュリズムで錯乱している特殊な状態だから何とかなっているが、まともな論争の場になれば、2025年夏に「後期高齢者医療制度の支援金をなくす」主張に辿り着きながら、幹事長が制度理解不足を露呈してトーンダウンした醜態を繰り返し、埋没するだろう。

「累進消費税」が逆転の一手
現状ほか政党と本質的な違いのないみらいが、減税ポピュリズムと差別化する提案がある。それは軽減税率の代わりに「累進消費税」を主張することだ。

詳細は上記記事を御覧いただきたいが、簡単にいえば「たくさん消費する人には高い税率をかける」仕組みで、「富裕税」的な性質を持つ。
軽減税率と根本的に異なるのは、複雑な「品目」分類ではなく消費総額という「数字」で累進性を設計する点だ。これにより事務効率の最大化、コスト削減、ロビー活動抑制、市場の歪み最小化といったメリットを保ちながら、消費額に応じた還付と組み合わせることで所得税以上の累進性を実現できる。
では、なぜこんな合理的な制度が今まで実現できなかったのか。それは技術的ハードルが高いからだ。累進消費税の実装には、個人の所得から貯蓄を差し引いた「消費」の総額を正確に把握する必要があり、高度なインフラを必要とする。
これまでもコクランやロゴフといった経済学者が様々なアプローチを提案してきたが、人々の行動変容予測の限界により決定打に至らなかった。しかし生成AI時代の今、状況は変化している。Salesforceの「AI Economist」や「TaxAI」などのAIシミュレーション技術が、税制が経済行動に与える影響を高精度でモデル化できる潜在力を示しているのだ。
これらはまだ閉じた環境での理論実験段階だが、税制設計の事前検証ツールとしての潜在力は大きい。みらいが手がける「Polimoney」の知見も、研究の出発点として有用ではないだろうか。

ここで重要なのは、この「実現可能性研究」を国政政党として主導することだ。AI基本計画での提言採用実績を活かし、政府主導の研究データセット整備やAISI活用による実証研究の枠組み構築を推進できる。これは民間やシンクタンクには困難だが、みらいだからこそ担える役割であるはずだ。
もちろん累進消費税には「高額消費の抑制」といった副作用もあり、日本で効果があるかは不透明である。あくまで私はこれが「永田町のエンジニアチーム」を目指すみらいの武器として非常に強力である、という主旨を強調したい。
「テクノロジーによる税制構造改革」という長期ビジョンは、他党に模倣できない明確な差別化要素になるからだ。即座の実現を約束せず「研究プロジェクト」に留めても、現状の筋が悪い「軽減税率対象拡大」より遥かに優れている。
※ なお繰り返すが、「軽減税率の対象拡大」案は撤回し、代替案として累進消費税を挙げるのが最低条件である。
今のままでは詰んでいる
みらいは少しずつ注目されてきたのだから、効果の限られた可視化・効率化よりも、現状最低レベルである「政策コンセプト立案にAIを使う」ノウハウに注力してほしい。せっかくAIが使えるのに、オペレーターの域に留まる使い方だけを追求するなら下請けエンジニアでよく、国政政党としての存在意義がない。
いまチームみらいに求められているのは、下記記事でも挙がっている通り、「信頼したいけどあと一歩不安」という「うるさ型」の層に納得してもらえる流れを作ることだ。

それには技術的楽観論に頼るアマチュアリズムを脱し、社会科学的知見に基づいた冷徹な全体ビジョンを持つ、そしてそれに基づいた「政策立案」にAIを用いる方針転換が必要条件である。技術的楽観論だけなら自民が既に何年も唱えている(なんの成果も! 得られませんでした!)のだから、残念ながら議席とスキル目当てで自民に取り込まれて終わる「未来」しかないだろう。
「テック政党」ビジネスの着地点としては、それで満足なのかもしれないが。
編集部より:この記事は投稿募集のテーマで寄せられた記事です。アゴラではさまざまな立場の皆さまからのご意見を募集します。原稿は、アゴラ編集部([email protected])にお送りください。






