東京23区選挙の実像:“保守が強い街”は、どこまでが保守なのか --- マン点

GoranQ/iStock

東京23区の選挙結果を語る際、「この区は保守が強い」「自民党の地盤だ」といった表現が常套句のように使われてきた。だが、その言葉はどこまで実態を捉えているのだろうか。

高市内閣は1月23日、衆議院を解散し、2月8日に総選挙を行う。与野党が拮抗する中、都市部有権者の投票行動は、選挙全体の帰趨を左右する重要な要素である。

本稿では、前回2024年衆院選の東京23区・小選挙区結果をもとに、自民党の得票構造を整理し、「保守が強い街」という言葉の中身を分解して考える。

2024年衆院選
東京23区・小選挙区における自民党得票率

なお、本稿で用いる数値・図表は2024年衆院選時点の公開データに基づくものであり、2026年2月8日投開票の第51回衆院選の結果を予測・評価するものではない。

「保守地帯」という言葉は正確か

一般に「保守地帯」とは、小選挙区で自民党候補が当選を重ねている地域を指す。しかし衆院選では、有権者は小選挙区と比例代表という二つの異なる投票を行う。候補者個人を選ぶ行動と、政党を選ぶ行動は制度上、明確に切り分けられている。

小選挙区で自民党候補が勝利したからといって、その地域で自民党が一貫して支持されているとは限らない。候補者の知名度や地縁、対立候補の構図が結果に影響する場合も多い。「保守が強い」という言葉は便利だが、投票行動を十分に説明しているとは言い難い。

小選挙区と比例代表、同じ有権者が“別の行動”をしている

自民党|小選挙区得票率と比例代表得票率の関係(東京23区)

東京23区では、自民党の小選挙区得票率と比例代表得票率が一致しない区が多い。小選挙区で3割台後半を得票する一方、比例では2割前後にとどまる例も少なくない。

これは偶然ではない。小選挙区では「誰に入れるか」が重視され、比例代表では「どの党を支持するか」が問われる。小選挙区の結果をそのまま政党支持とみなすと、実態を見誤る。

候補者には入れるが、党には入れない

小選挙区得票率から比例代表得票率を差し引いた乖離を見ると、文京区や豊島区、江戸川区では10ポイントを超える差が確認できる。候補者個人には票が集まるが、政党としての支持は限定的である。

一方、港区や渋谷区などでは乖離が比較的小さく、候補者評価と政党評価が近い水準にある。地域ごとに、有権者が重視する判断軸が異なっていることが分かる。

自民党|「人の票」と「党の票」の乖離(東京23区)

“人に入れる街”と“党に入れる街”は違う

次に、得票率と投票率の関係から、別の側面を確認する。

自民党|得票率と投票率の分布(東京23区)

自民党得票率と投票率を並べると、得票率が高くても投票率が特段高くない区が存在する。支持の集中と政治参加の広がりは必ずしも一致しない。

都市部では、政党よりも候補者や争点を基準に投票する有権者が多い。「保守が強い街」と見える地域でも、その内実は思想的に一枚岩ではない。

結論

東京23区の選挙結果は、「保守が強い」という一言では説明できない。小選挙区と比例代表を分解して見ることで、初めて投票行動の構造が見えてくる。

選挙結果は思想の強弱そのものではない。制度、都市構造、そして有権者一人ひとりの選択が積み重なった結果である。今回の総選挙を読み解く際にも、単純なラベル貼りではなく、分解して見る視点が求められている。

マン点
マンションアナリスト。一級建築士。20年以上続けている不動産ブログ「マンション・チラシの定点観測」の管理人。
X(旧Twitter):@1manken