「自民、単独過半数の勢い」(読売、日経、その他)など、衆院選の予測が公表されています。YouTubeで見た選挙調査会社・選挙ドットコムの予想は自民党が「205~252議席」で、絞ると「220~226議席」だそうです。幅がかなりあり、「単独過半数の勢い」と言い切れるのかどうか。
チャットGPTに選挙結果の予想を聞いてみました。「自民は220~240議席で、233議席は微妙。勝っても選挙後の政権運営は厳しい」とのことでした。私もそう思います。
YouTubeでは、朝日新聞記者OBの人が「自民・維新は敗北、惨敗する」、東大名誉教授も「自民党は壊滅的敗北をする。自民党は終り」との宣託もあります。このあたりになると、予想というより、自分の願望を述べているのに過ぎないのかもしれません。

応援演説をする高石首相 自民党HPより
気になったのは、日経の29日朝刊1面「食品消費税ゼロに、経済学者の88%が反対。社会保障が不安定に。インフレ加速も」という経済学者(50人)を対象とした調査結果です。時々実施している調査で、ほとんどの政党が公約している「食品消費税ゼロ」に猛反対の知見です。
インフレを加速する食品消費税ゼロ
「供給サイド(力)が変わらず、消費需要が喚起されインフレが加速する」、「一時的減税による価格低下は限定的で、税率を元に戻す際の価格上昇の方が大きい」、「食料品支出額が大きい高所得層がより多くの利益を得る」などの問題点を学者は指摘します。私も同感です。さらに公約通り、2年間でもとの8%に戻すのは政治的に困難だと私は思います。
とにかくこうした専門的知見を各党は無視しています。ポピュリズムに走って、目先の利益を有権者に与え、票稼ぎを最優先する。
首相の解散権について、メディアは「伝家の宝刀」という表現を好みます。「憲法7条の拡大解釈をした解散」という表現を常時、使うようになってほしい。物価上昇を取り上げる場合でも、「インフレによる税の増収という『インフレ税』を政権は導入し、国民生活に犠牲を強いている」という指摘を常時するようにすれば、世論の風向きも変わってくるでしょう。
世界は複雑化しており、地球環境、人口減、格差拡大、グローバリゼーションの限界など長期的な対策を必要とする問題が目白押しです。それにもかかわらず、選挙では政党は短期的な対応しか示しません。示しても実行する意欲は感じられません。「社会や地球=長期的対応が必要」なのに「選挙=短期的、目先の選挙対策」という不幸な不一致が広がっています。
地政学的知識がない高市首相
高市氏に対し、田中均・元外務審議官は「地政学的な知識がない。中国を含めた国際環境をどう作っていくのかが首相としての責務なのに、それを果たしていない。台湾有事は日本有事を強調するばかり。戦争することなのかではなく、首相の責務は戦争をとめることです。敵を作らないことが最重要です」と批判しています。
私も同感です。なぜこうした専門家の知見が選挙で生かされないのか。これも、長期的視点に立つことより、選挙受けする発言を繰り返すことを首相らが優先しているからです。そこが危ういのです。
専門的知見を持つ識者らから「トランプ米大統領は中国との対決姿勢から、米中間の関係改善に方向転換している。有事の際の米国頼みの外交はリスクが高く、トランプ氏に梯子をはずされる事態も想定しておく必要がある」との指摘が少なくありません。高市氏の過剰な対米依存を懸念します。
「選挙は短期的反応」「世界は長期的課題に直面」
なぜこうしたことが起きるのか。「世界は複雑化している」のに、「ネット時代は、情報の切り取り、感覚・感情的反応、政治家による危機の演出、長考より短期的な対応に陥っている」だからでしょう。
かつての意思決定モデルでは、「識者・専門家の知見→メディアによる仲介・伝達→有権者への影響→投票行動に反映→政策決定」という経路がありました。それが今や、「政党が勝てる」が最優先されるモデルに転換し、「目先の利益誘導、危機の演出」にはまっててしまったようです。
選挙予想・結果より、市場の反応が政治を動かす時代になりそうです。特にに「財政赤字拡大を懸念する長期金利の上昇→円安・物価上昇→国民の不満膨張→政策形成」という意志決定の回路が重みを増すに違いない。市場の反応は乱暴ですから、国民経済に対する痛みは大きい。
編集部より:この記事は中村仁氏のnote(2026年1月30日の記事)を転載させていただきました。オリジナルをお読みになりたい方は中村仁氏のnoteをご覧ください。






