トランプ氏の関税政策の一部が連邦最高裁で敗訴を受けたことで想定通り、「1974年通商法122条」を適用した150日間の15%の関税を適用すると発表しました。この適用は当初から想定されていたもので驚きはありません。ただ、個人的にはこの「1974年通商法122条」の適用も実際のところは怪しい、つまりかなりグレーな感じがするので、近いうちに揉めるとみています。

トランプ大統領 ホワイトハウスXより
この法律ができたのはアメリカの貿易が急激な環境変化で議会にその判断を任せていられないような事態が生じた時に大統領の権限でその対応を行うという趣旨のものです。では今、アメリカが急激な貿易赤字、ないしドル安による深刻な通商的ダメージを受けているか、と言えば否であります。つまりトランプ氏はこの適用を間違った意味合いで行うわけで法曹界からは100%疑義の声が出るはずです。
個人的には大統領権限の逸脱以外の何物でもないと考えます。ではなぜ、トランプ氏はここまで関税にこだわるのか、と言えばビジネスマン出身故に「儲けること」を主眼としているので焦っている、これしか思いつきません。この通商法は最長150日最大15%が最大の権限で、期限については議会の承認があればこれを延長することもできる、とありますが、今の議会では共和党から造反者は出ると見込まれ、議会を通すのは至難の業とみています。
また敗訴が決定した関税について既に課した分はどうなるのか、という点についてはベッセント財務長官の言葉を借りれば「返金を巡る訴訟が数カ月から数年に及ぶ可能性があり、『混乱』になり得る」(ブルームバーグ)としています。つまり下級審に差し戻された具体的な対応とはおびただしい数の訴訟について一つずつその訴状に対応するわけですが、多くの訴訟は企業が行なっているので想定通り、企業側が勝訴すればお金は企業に戻るわけです。しかし、この一時的な高関税に対する金銭的負担は誰が行なったか、と言えば消費者が中心であります。もちろん、一部の企業は自社で関税分を泣く泣く負担したところもあると思いますが、多くの企業は値上げで対応したわけです。その値上げ分がそっくり企業に戻ってくるので企業はホクホク、消費者は泣き寝入りということになるのです。
ということは平たくいえば、トランプ関税でアメリカ国民は不要な物価高でもがき、損をさせられたということになるのです。個人的にはそのような世論形成が今後、中間選挙に向けて盛り上がるようであればトランプ政権への疑惑の目は強くなるわけで共和党議員は「これはヤバいぞ」になり、造反者が出る気がします。アメリカ議会では総論賛成各論反対で造反することはしばしば起きますし、議員が政権方針に疑問符をつけた場合、党の方針に従わないこともあり得るわけです。
ではもう一歩踏み込んでトランプ氏が中間選挙までにどのような施策を施すのか考えてみましょう。多分、関税についてはほぼ手を付けてしまったし、今回の15%一律関税も日本などはほとんど影響なしとされてます。よって関税による功績は期待できません。USMCAの交渉が残っていますが、トランプ氏の「嫌カナダ」姿勢は既に議員から厳しい目が注がれているので感情的な交渉は出来ないとみています。カナダは今は時が来るのを待っている状態であり、その間、他国との通商拡大に精力的になっている状況です。どちらかと言えば今はEUのポリシーに近い状態ともいえます。
となれば残すは外交しかないとみています。個人的にはトランプ氏が中間選挙までの残り9か月で最も力を注ぐのは議会の邪魔が少ない外交政策でアメリカの立場をより強化するとみています。具体的には南北アメリカ大陸の統制、中東をアメリカの制御下にすること、中国との一定の妥協ですが、ウクライナ問題はひょっとすると放置する気がしています。これはトランプ氏のゼレンスキー氏への感情問題が根底にあることとディールという観点で見た時、ウクライナから得られる果実よりロシアとのディールがはるかにおいしいし潜在的魅力があると考えているのがありありとわかるからです。
日本が気を付けるべきはトランプアドミニストレーションがいづれ瓦解した時、日本はべったりだったよね、と新政権から揶揄されないよう多少の距離感は維持しておくことでしょう。コミュニケーションは重要ですが、日本はアメリカのいうことに100%従うポリシーレスと思われている節もあるのでそこは繰り返し申し上げているように「いうべきは言う」姿勢を貫けるようになってもらいと思っています。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2026年2月23日の記事より転載させていただきました。






