
画像はイメージ
Olga Yastremska/iStock
対米投資の第1弾として「人工ダイヤモンド」が選ばれた。日本が「投資」する6億ドル(約900億円)で、ジョージア州に人工ダイヤモンド製造工場を建設するという。
ジョージア州は大統領選激戦州。トランプ氏にとっては、2020年の選挙で敗れ、いまだ選挙不正を主張する「因縁の地」でもある。早速、現地で演説だ。「雇用!雇用!雇用!」と書かれた横断幕を背に
「株価は53回も史上最高値を記録した」
「あなたたちの退職金口座は過去最高水準だ」
「我々は11ヶ月で18兆ドル以上稼いだ(バイデンは1兆ドルも稼げてない)」
と実績をアピールする。
この新工場を運営するのは、デビアス傘下の「エレメントシックス社」だ。CERN(欧州原子核研究機構)のヒッグス粒子実験用ダイヤの開発や、DARPA(米国国防高等研究計画局)プログラムの主導など数多くの実績があり、オレゴン州に世界トップクラスの人工ダイヤモンド工場を有している。技術力・生産力とも極めて高い。
このエレメントシックスと提携している日本企業がある。東京都足立区に本社を置く「Orbray株式会社(以下Orbray)」だ
提携する日本企業
Orbrayは、工業用宝石の精密加工会社である。大口径ダイヤモンド基盤を開発するなど、人工ダイヤモンドにおいて高い技術力を持つ。
エレメントシックスと提携したのは25年6月。エレメントシックスCEOのSiobhan Duffy氏によれば、「ウエハーサイズの人工ダイヤモンドの開発」が提携目的だという。つまり、見据えているのは「ダイヤモンド半導体」だ。ジョージア州の工場とは目的が異なるものの、Orbrayは対米投資において今後重要な役割を担う可能性がある。
Orbrayは好業績を継続しており、29年には東証プライムへの上場を予定している。推定時価総額は500~600億円。最大100億円の資金調達を見込む。「2029年」は、ダイヤモンド半導体実用化が見込まれる「2030年」とタイミングが重なることもあり、上場は大きく期待されている。
高い技術力の日本企業
一方、ここ数週間の株価で注目を集めたのが、東証グロースに上場している「株式会社イーディーピー(以下イーディーピー)」だ。同社の株価は、2月18日に、年初(402円)の7倍超「3100円」にまで急騰、その後「1273円(2月20日)」まで下落するなど乱高下している。

株価・株式情報
Yahoo!ファイナンスより
同社は「種結晶」の製造という最上流工程から、宝飾用ダイヤモンドの販売という下流工程まで手掛けている。強みは「大きな」種結晶が作れることだ。「種結晶」とは、0.2mm程度の薄い板状のダイヤモンドのことをいう。
現在主流の製造方法(化学気相蒸着法=CVD法※)では、種結晶の上に、気体化した炭素を積もらせ大きくしていく。ダイヤモンドは「左右」ではなく、「上」に成長していくわけだ。元の種結晶の左右(面積)が小さいと、大きなダイヤモンドに育たない。よって、最初に入れる「種結晶」の大きさが重要となる。
※ 製造法の詳細は「気体から作るダイヤモンド」を京セラが販売する理由(2025年7月)を参照いただきたい。
イーディーピーが25年2月に発売したダイヤモンド単結晶は「30×30mm」。世界最大級である。このサイズを「商品化」できている企業は他に見当たらない。
ところが、近年、同社の販売先であるダイヤモンド製造会社に不穏な動きがある。同社の種結晶から作ったダイヤモンドを薄く切り、これを「種結晶」として販売する企業が現れたのだ。当然、同社と競合し売上に影響する。これに、小型種結晶の需要減、ガザ攻撃によるイスラエル大口取引の一時停止などが重なり、同社の決算は赤字が続いている。
日本企業はどうなるか
日本の人工ダイヤモンドメーカーは高い技術力がある一方、経営面で厳しい状況にある企業も少なくない。国内のダイヤモンド商社も不安に駆られている。中国がいつ輸出停止をするか、綱渡り状態にあるからだ。
今回の投資案件決定につき、ラトニック長官は以下のように述べている。
「人工ダイヤモンドの米国需要の100%を国内生産する」
米国商務省公式サイトより
冗談ではない。900億円も払うのだ。「『日米両国』の需要を100%満たす」ぐらいのことは言っていただきたい。
日本政府には、人工ダイヤモンドを製造する国内メーカー、取り扱う商社とも利益を享受できるよう、上手に立ち回ってほしい。
※ 本稿は、投資の勧誘を目的としたものではありません。投資に関する最終的な決定は、利用者ご自身の判断でお願いします。








コメント