福島第一原発のデブリ除去はやめて「石棺」方式にすべきだ

福島第一原発事故から15年。原子力規制委員会の初代委員長だった田中俊一氏が、廃炉について語っている。

デブリを完全に除去するには240万年かかる

東京電力は、福島第1原発の廃炉完了目標を2041~51年としているが、昨年までに取り出しに成功したデブリは2号機の約0.9グラムにとどまる。県民が望むような廃炉への進行具合は、ほぼ0%に近い。

まず、廃炉の定義について考え直す必要がある。県民の多くが想定している「廃炉」は、原発の敷地を更地にすることであろう。はっきり言って、将来更地にできる可能性は限りなくゼロに近い。デブリの取り出しが15年でわずかしか進んでおらず、全てを取り出せたとしても処理や保管が非常に難しいからだ。

事故から15年で0.9グラム。このペースで880トンを取り出すには、240万年以上かかる。つまり田中氏も断定するように、デブリ取り出しは技術的には不可能なのだ。

福島第一原発の内部のデブリ(資源エネルギー庁)

2050年までにデブリを完全に除去するには、毎日90kgのデブリを取り出す必要があるが、そのコストはいま計画している約22兆円ではすまない。最大70兆円かかるというのが日本経済研究センターの見通しだ。

それを福島県民が負担するならいいが、廃炉費用は東電が40年かけて収益から払うことになっているので、東電の利用者2100万世帯が負担する。70兆円の廃炉費用を2100万世帯×40年で割ると8万3000円。

つまり毎年8万円以上も東電の電気代が上がるが、デブリ除去による電力利用者のメリットは何もない。こんなバカげた事業が「ここまで来たらやめられない」という惰性だけで続いていることに電力利用者は怒るべきだ。

「石棺」方式のコストはデブリ除去よりはるかに安い

ではどうすればいいのか。田中氏は「もっと大胆でパワフルな施策が求められる」と言っているだけだが、2016年に原子力損害賠償・廃炉等支援機構は「技術戦略プラン」で、チェルノブイリ原発のように建屋をコンクリートで覆う石棺方式に言及した。

しかしこれに福島県の内堀知事や県議会、地元自治体が激怒した。「発電所は更地にして、デブリは県外へ運び出す」という国との約束を根底からくつがえし、福島を核のゴミ捨て場にするものだ」と反発し、経産省に強く抗議した。

これに対して経産省は「石棺という選択肢は全くない」と火消しに走り、支援機構も謝罪した。つまりデブリ取り出しは、技術的なフィジビリティスタディもしないまま、地元の「お気持ち」で決まったのだ。

石棺という言葉の響きがよくないが、今の発電所をシェルターで密閉し、デブリは水で冷却すればいい。その想像図をチャットGPTに描いてもらった。


福島第一の石棺

このコストは、周辺地域をすべて買い上げた上で石棺で密閉した場合、最大32兆円というのが日経センターの見積もりである。これは今の廃炉費用22兆円を超えるが、デブリ除去の70兆円よりはるかに安い。

技術的には水を半永久的に循環させないといけない点が難点だが、今のままデブリを取り出しても、いずれ行き詰まる。それなら早めに石棺方式に切り替えたほうがいい。澤田哲生氏もいうように、原子力の安全を祈る記念碑にしてもいいのではないか。

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