スマホ中毒なのは「若者より高齢者」

黒坂岳央です。

スマホ中毒というと、多くの人は若者の問題だと考える。電車でもカフェでも、若い世代がスマホを見続けている光景は珍しくない。

だがスマホ依存は「若者の問題」ではなく、むしろ中高年や高齢者にもスマホ依存が広がっていることが複数の研究で指摘されている。

PonyWang/iStock

高齢者こそスマホ中毒が増えている

総務省の通信利用動向調査によると、日本では60歳以上でもスマホ利用率は約8割に達している。現在、中年期の人が年を取れば、さらにスマホ普及率は増加するだろう。そして今や高齢者のスマホ中毒者も利用者の急増とともに増加しているのだ。

これは日本特有の問題ではない。米国を始めとした海外の高齢者調査でも、長時間スマホを利用する層が増加傾向にある。

なぜ高齢者はスマホ中毒になるのか?

理由はシンプルで定年退職後に自由時間が増えるからだ。仕事や家庭で忙しい現役世代に比べて、高齢者は可処分時間が多い。結果としてスマホに費やす時間も増えるわけだ。

高齢者がスマホ中毒で起きる問題

高齢者の場合、若者とは違う社会的リスクがある。特に問題視されているのが、詐欺や偽情報への脆弱性である。

実際、SNS型投資詐欺の被害者は50代以上が多数を占めている。SNSやメッセージアプリ経由での詐欺は、デジタルリテラシーの低い高齢者を狙うケースが多い。

筆者が住む町の広報誌でも「高齢者のロマンス詐欺、投資詐欺が急増している」と注意喚起がなされている。被害件数、相談が増えているという。また、注意喚起という形を取らないが、陰謀論やスピリチュアル、胡散臭い宗教にハマる高齢者も少なくない。

なぜだろうか?その理由を考察してみる。

1つ目の理由はデジタルリテラシーの世代差である。高齢者はSNSに使い慣れておらず、性善説でインフルエンサーの言う事にコロッと騙されやすい。筆者の親族にはまさにこれに該当する人がおり、次々と詐欺や勧誘に自ら応募してしまう。何度も騙されて、周囲が止めても本人は「今度こそ、この人だけは大丈夫」と聞かない。

2つ目の理由が確証バイアスである。人間は年齢とともに信念が固定化する傾向がある。その結果、自分の考えを支持する情報だけを信じやすくなる。年齢とともに信念が固定化しやすくなるため、確証バイアスが強く働く可能性がある。

自分が信じた人を信じるので、周囲が止めるほど余計に燃え上がってしまう。コンビニでも詐欺に騙されるお年寄りを必死に止めても、振り込みを完了させてしまうニュースをよく見るのもこれにあたる。

テレビよりたちが悪いSNS

ここでよく比較されるのが「テレビの番人」との違いである。

20年以上前から「高齢者がテレビの番人になるのは痴呆への入口」といった事が言われていた。だがはっきりいって、SNSの害と比べればテレビの方がマシと言わざるを得ない。ここでいう「害」とは媒体そのものの有害性を問うものではなく、あくまで害が出た場合の被害の範囲、質に限定した話であることを付記しておきたい。

さて、テレビは情報源が限られており、編集もプロが行う。アルゴリズムによる増幅もない。なのでテレビの番人になることの害はせいぜい、「脳に悪い」「テレビショッピングで余計な買い物をする」くらいである(これでも十分害ではあるが)。

その一方でSNSは情報源が無数で、誰でも発信でき、アルゴリズムによって情報が増幅される。さらに直接、相手に会いに行けてしまう問題がある。こうなると陰謀論にハマり、詐欺の被害にあい、その他のトラブルに巻き込まれやすい。

筆者は昔、投資初心者の頃に「投資サークル」なるものをSNS経由で知り、いってみたことがある。その頃は右も左もさっぱりわからなかったので、投資の勉強がてら参加したのだが、今振り返っても完全に詐欺であった。

「ここにいる投資の神様の言う通り売買すれば必ず儲かる」という触れ込みで、「今だ買え!今だ売れ!」とシグナル配信に従ってタイミングトレードしろというものだった。

とんでもない受講料だったので、知識ゼロの初心者でも怪しさを感じてすぐ撤退したのだが、驚いたのはお年寄りの参加者が非常に多く、多くの人が申込みをしていたことだった。その後、その投資サークル名で検索すると集団訴訟問題になっていた。

また、ロマンス詐欺はさらに身近だ。筆者の知る高齢者にもSNSで知り合った20代前半の女性に、高級ブランド品を貢ぎまくる高齢者の社長がいる。彼の感覚はまったく理解できないが、家庭が崩壊しても色恋営業の破壊力は凄まじいものがあると感じる。

今や、高齢者が被害にあう犯罪は、スマホを起点としたものになってきていると感じる。スマホを使わなければITリテラシーは磨かれることはないが、スマホを使うことで詐欺や犯罪の被害者になる難しさがある。

スマホ中毒は若者だけの問題ではない。むしろ若者より高齢者の場合の方が詐欺の被害など、実害で現れる。この意味で、スマホ中毒問題はむしろ「若者より高齢者」の問題になりつつあると言えるだろう。

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働き方・キャリア・AI時代の生き方を語る著者・解説者
著書4冊/英語系YouTuber登録者5万人。TBS『THE TIME』など各種メディアで、働き方・キャリア戦略・英語学習・AI時代の社会変化を分かりやすく解説。

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