「ネガティブ思考」が才能だと言われて、最初は怒った話

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(前回:恥をさらしたら、なぜか人生が回り始めた

くよくよ悩む性格を「直したい」と思っている人は多いだろう。

毎晩、言ってしまったことを後悔する。やろうと思ったことも、考えすぎて動けない。そして「こんな自分が嫌だ」と自己嫌悪に沈む。この無限ループ、経験がある人には説明不要だと思う。

誰とでもうまく「話せる人」と「話せない人」の習慣』(松橋良紀 著)明日香出版社

松橋良紀氏もそうだった。いつもくよくよ、毎日後悔と反省ばかり。否定的で批判的な自分の性格を、生まれつきの欠陥だと信じていたという。

30歳のとき、心理学の講座で先生がこう言った。「すべてのネガティブな行動は、何かしらの役に立っているから起きている」と。幻聴や幻視でさえ必要があるから起きている、と。

松橋氏はキレた。教室で声を荒らげた。「マイナス思考が役に立っている? 冗談じゃない。ずっとこの性格のせいで苦しんできたのに!」

——わかる。私もたぶん同じ反応をする。「あなたのネガティブには意味がある」なんて、悩んでいる最中に言われたら腹が立つ。綺麗事にしか聞こえない。

ところが先生の次の言葉で、空気が変わった。

「もしそのブレーキがなかったら、繊細な松橋さんはもっと深刻なダメージを受けていたかもしれません。ネガティブ思考は、あなた自身を守ってきたんですよ」

守ってきた? ネガティブが? まだピンとこない松橋氏に、先生はさらに踏み込んだ。「くよくよするって、具体的にどんな行動ですか?」

松橋氏は答えた。毎晩、あんなこと言わなきゃよかったと後悔している。やりたいことがあっても、リスクばかり考えて動けない、と。

すると先生は、その行動から「良い悪い」の判断だけを取り除いてみせた。

「やったことを思い返して徹底的に改善点を考える。行動する前にリスクを最大限に考え抜く。それが松橋さんです」

同じ事実なのに、言い方ひとつで意味がひっくり返る。「くよくよ悩む人」が「改善点を徹底的に洗い出し、リスクを見極められる人」になった。先生いわく、その力は教える仕事やコンサルティングに向いているという。

ここで松橋氏は、人生で初めて「自分もけっこういけるのかも」と思えたそうだ。モノクロだった世界が急に色づいたような感覚だった、と。

この話、要するに何が言いたいかというと、欠点と才能は同じコインの裏表だということだ。ただし、ひっくり返すには「事実だけを並べる」という作業がいる。

感情を乗せたまま自分を見ると、どうしても欠点にしか見えない。一度、感情を外して行動だけを書き出してみる。そうすると、自分でも気づかなかった強みが浮かび上がってくることがある。

あなたが一番変えたいと思っている性格。それ、ひっくり返したら何になるだろう。

※ ここでは、本編のエピソードをラノベ調のコラムに編集し直しています。

尾藤克之(コラムニスト、著述家、作家)

<書籍評価レポート>

■ 採点結果
【基礎点】  40点/50点(テーマ、論理構造、完成度、訴求力)
【技術点】  20点/25点(文章技術、構成技術)
【内容点】  20点/25点(独創性、説得性)
■ 最終スコア【80点/100点】
■ 評価ランク ★★★☆ 水準以上の良書
■ 評価の根拠
【高評価ポイント】

実体験の説得力:著者自身の営業時代の赤っ恥エピソードから講師起業後の挫折まで、具体的な失敗談が惜しみなく開示されており、読者の共感を強く引き出す構成になっている。また、潜在意識のネガティブ行動に関する心理学講座でのやりとりを会話形式で再現し、専門知識を読み物として無理なく伝えている点は技術的に高い水準にある。

「事実ベースで言い換える」手法の実用性:くよくよ悩む行動を良し悪しの判断なしに書き出すという具体的メソッドは、読後すぐに実践可能であり、ビジネス書としての訴求力が明確である。

【課題・改善点】
構成の類似性:「ダメだった過去→転機→成功」という展開が繰り返されており、読み進めるうちにパターンの既視感が生じる恐れがある、また、著者の転機がいずれも第三者からの指摘に端を発しており、著者自身の内発的な気づきや葛藤の掘り下げがやや薄い印象を受ける

データ・事例の幅:全国450人中1位という実績や講座でのエピソードなど著者個人の経験が中心で、他者の成功事例や学術的データによる補強があればさらに説得力が増したと思われる

■ 総評
本書は、コミュニケーションに苦手意識を持つ読者に向けて、著者自身の生々しい失敗体験と心理学的知見を組み合わせた実用的な一冊である。「恥を開示する力」「ネガティブ思考の再定義」という二つの柱は、いずれも読者が自己肯定感を回復するための具体的な視座を提供しており、とりわけ会話形式による心理学講座の再現は臨場感があり読みやすい。

一方で、成功パターンの反復による構成上の単調さや、第三者の助言に依存した展開がやや目につく点は改善の余地がある。総合的には、コミュニケーション改善の入門書として水準以上の内容を備えた良書と評価できる。

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