トランプは本当に「核のコード」を使おうとしたのか?

最近、世界を震撼させる噂が駆け巡っている。元CIA分析官のラリー・ジョンソン氏がポッドキャスト番組で語った、「トランプ大統領がイランに対して核兵器を使用しようとし、ダン・ケイン統合参謀本部議長に止められた」という証言である。

にわかには信じがたいハリウッド映画のような展開だが、現在の緊迫する中東情勢と、ホワイトハウス内部の異常な機能不全を鑑みれば、これを単なる陰謀論として笑い飛ばすことはできない。果たして、トランプは本当に核のコードを使おうとしたのだろうか。そして、軍のトップが大統領の命令を「拒否」することは可能なのだろうか。

大統領の絶対的権限と「違法な命令」のジレンマ

まず、制度的な事実を確認しておきたい。アメリカ大統領は、単独で核攻撃を命じる権限を持っている。大統領が常に携行している本人確認用の暗号カード(通称ビスケット)と、側近が持つ通信機器入りのカバン(フットボール)を使用し、適正な手順で命令を下せば、軍のシステムは自動的に発射へと動く。そこに議会や裁判所、あるいは軍トップの「承認」が入り込む余地はない。

したがって、ジョンソン氏が語った「ケイン将軍が軍トップとしての特権を行使して拒否した」という表現は、厳密な指揮系統のルールとは矛盾する。大統領の命令を軍人が独断で覆すことはできないからだ。

しかし、現実の運用には「抜け道」が存在する。アメリカの軍人には、戦時国際法などに違反する「違法な命令」には従わない義務があるのだ。明白な脅威がない状況での核使用は、不均衡な民間人の犠牲を伴う戦争犯罪とみなされる可能性が高い。

ケイン将軍が体を張って大統領を止めたとすれば、それは特権の行使というよりも、違法な命令に対する命がけの「抗命」であったと解釈すべきだろう。

危機管理室からの「排除」が物語る大統領の精神状態

この「核使用未遂」の噂が不気味なほどの真実味を帯びている理由は、トランプ大統領の現在の精神状態に対する深刻な懸念が背景にあるからだ。

ウォール・ストリート・ジャーナル紙の報道によれば、最近行われたイランでの米兵救出作戦の際、トランプ大統領は「意図的にシチュエーションルーム(危機管理室)から除外されていた」という。数時間にわたって側近に怒鳴り散らすなど、極度に不安定な状態にあった大統領を、軍高官らが「作戦の妨げになる」と判断したためだ。

大統領はSNSで「ケイン将軍もイラン戦は容易に勝てると考えている」と豪語していたが、ワシントン・ポスト紙が報じた通り、実際の将軍の助言は全く異なるものであった。最高司令官と軍トップの間には、もはや修復不可能なレベルの認識の溝と不信感が横たわっている。

危機に瀕する中東情勢と崩壊するシビリアンコントロール

現在、アメリカとイランは全面衝突の瀬戸際にある。米海軍によるイラン貨物船への攻撃を機に、イランはホルムズ海峡を再び封鎖した。米軍はイランのインフラを標的とした大規模な爆撃キャンペーンを計画しているとされるが、専門家は「地上戦は自殺行為であり、爆撃もイラン国民を逆に団結させるだけで軍事的な成果はない」と警告している。

和平交渉の糸口も見えず、中東全域を巻き込む破滅的な戦争へのカウントダウンが進む中、軍の最高司令官が感情のコントロールを失い、軍トップがそれを必死になだめているというのが、現在のホワイトハウスの偽らざる実態である。

トランプ大統領が実際にあの夜、「ビスケット」に手を伸ばしたのかどうか、真相は歴史の闇の中かもしれない。しかし、この信じがたい噂がまことしやかに語られ、主要メディアまでもが大統領の異常な行動を報じざるを得ない状況そのものが、アメリカの抱える最大の危機である。

軍トップが大統領の「ベビーシッター」にならなければ核戦争を防げないのだとすれば、アメリカが誇るシビリアンコントロール(文民統制)は、すでに崩壊し始めているといわざるをえない。

コメント投稿をご希望の方は、投稿者登録フォームより登録ください。

コメント