「より強く、より自立した欧州の構築を」:不安定化するワシントンの外交政策

5月9日はヨーロッパの平和と繁栄を祝う「ヨーロッパの日」だが、欧州連合(EU)では米国から独立促進を強く求める声が高まってきた。ドイツのベルテルスマン財団が7日発表した調査によると、EU市民のほぼ4人に3人(73%)が、「欧州は独自の道を歩むべきだ」と考えている。さらに、58%という明確な過半数が、もはや米国を信頼できるパートナーとは考えていない。欧州の自治権強化を支持する人の割合は2024年以降10ポイント増加した。EUにとって最も重要なパートナーとしての米国の評価は、20ポイント低下し、31%だ。

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ベルテルスマン財団(Bertelsmann Stiftung)は、1977年にラインハルト・モーンによって設立された、ドイツのギュータースローに本部を置く非営利の政策シンクタンクで、民主主義の危機管理と持続可能性の強化、社会の改革プロセス促進などをその活動の目標としている。

同財団が発表した調査報告をまとめると、「欧州はより大きな独立を求める一方、米国を欧州最大の同盟国とする支持が急落。欧州は世界における自らの立ち位置を再考している。数十年にわたる米国との緊密な協力関係を経て、EU市民のほぼ4分の3が、EUは「独自の道を歩むべきだ」と回答しているのだ。トレンド自体はもはや新しくないが、欧州独立の機運が予想以上に高まっていることが明らかになった。

欧州の大多数は、「米国をもはや信頼できるパートナー」とは見ていない。トランプ政権発足から1年半が経過し、米国を欧州にとって最も価値のある同盟国と認識する回答者の割合は20ポイントも低下した。中国が代替パートナーとして勢力を拡大できない中、欧州は西側諸国間の同盟関係を再構築している。今回の新たな調査は、こうした変化を明らかにしている。

ヨーロッパの日を前に、欧州の人々は戦略的な再出発に向けて動き始めている。2024年9月から2026年3月にかけて、EU加盟27カ国すべてにおいて定期的に住民調査を実施した。その結果、自立を望む欧州大陸の姿を示している。EU市民の73%が、数十年にわたる米国との緊密な連携の後、EUは独自の道を歩むべきだと考えている。その割合は2024年はまだ63%だった。この変化はあらゆる年齢層に及んでおり、特に高齢の欧州人の間で顕著な増加が見られる。

調査分析によると、分断を招く米国大統領と高まる地政学的緊張が、欧州の世論を変化させている。米国離れが進む一方、西側同盟諸国間の関係に変化が見られる。例えば、英国とカナダは戦略的パートナーとしての重要性を増している。

以下、代表的な2例を紹介する。

例1 In the last half century, Europe and the United States have often cooperated closely. Do you think that it is time for Europe to go its own way?
(過去半世紀にわたり、ヨーロッパとアメリカは緊密に協力関係を築いてきた。そろそろヨーロッパが独自の道を歩むべき時と考えるか?)

「Agree」(同意)は、ポルトガル83%、ベルギー80%と高く、ドイツ76%、スペイン74%、イタリア72%と、いずれも70%台だ。一方、フランスは69%、英国67%と続く。EU27カ国の平均値は73%だ。

米国への信頼は低下しており、現在ではヨーロッパ人の58%がワシントンを信頼できるパートナーとは考えていない。米国は相対的に見て依然としてEUにとって最も重要な同盟国(31%)ではあるものの、その地位は2024年以降20ポイント低下している。

例2 How trustworthy of a partner is the United States for Europe?
(米国は欧州にとってどれほど信頼できるパートナーか?)

米国を最も信頼できるパートナーと考える国はポーランドで61%だ。それに次いで、ポルトガル48%、イタリアが44%だ。一番低いのは欧州の盟主ドイツで27%だ。20%台はドイツだけだ。フランス39%、英国37%だ。ポーランドとドイツでは「Trustworthy」で34%も違うのだ。EU平均は42%だ。

看過できない点は、ヨーロッパの独立志向は、北京への接近には繋がっていないことだ。中国に対する懐疑的な見方は根強く、経済的コストを犠牲にしてでも依存度を下げるべきだという意見が圧倒的多数を占めている。むしろ、既存の同盟体制の中で、人々の優先順位は変化しつつある。英国とカナダは戦略的パートナーとして重要性を増しており、ヨーロッパ諸国は北大西洋同盟を放棄するのではなく、むしろ再均衡を図っていることを示唆している。NATOへの支持は依然として堅固で、圧倒的多数(63%)がNATOを安全保障の要と見なしている。

ベルテルスマン財団の欧州戦略問題担当専門家のフロリアン・コマー氏は「欧州の人々は米国からの独立性を高めたいと強く望んでいるという明確なメッセージが伝わってくる。信頼関係は損なわれ、欧州の中心的なパートナーとしての米国の地位は低下した。パートナーシップは修復不可能というわけではないが、私たちのデータは、大西洋横断関係におけるより根深い構造的な亀裂を示している。欧州市民は、特に外交・安全保障政策において、より大きな独立性を求めている。政策立案者は、この要求を具体的な政策と、欧州自身の能力への真の投資へと結びつける必要がある」という。

大西洋横断関係担当専門家のブランドン・ボーン氏は、「ワシントンの外交政策が不安定化するにつれ、英国やカナダといった志を同じくするパートナーとの関係を深めることが不可欠になっている。こうした状況において、より強く、より自立した欧州を構築することは、より高いレジリエンスと戦略的安定性を確保するためのパートナーシップの拡大と密接に関係している」と付け加えている。

トランプ大統領 ホワイトハウスXより


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2026年5月9日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。

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