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前回記事「ネット時代の国政選挙:紙投票の限界を政治家はどう見る」に書いたように、現行の紙を用いた投開票制度は完ぺきではない。なりすまし投票、投票用紙の交付間違い、開票ミスと多くの問題が選挙終了後に報道される。それでも紙投票が続いているのは、「ほぼ問題ない」と多くの人が捉えているからだ。しかし、人々は参政権が保障されない人がいるという事実を知らない、あるいは忘れている。
典型例は在外邦人。海外に住む18歳以上の成人(海外有権者)の数は約104万人から105万人。このうち、在外投票権を登録している人数(在外選挙人名簿登録者数)は、今年2月の衆議院選挙時点で103,380人だった。実際に投票した人数は比例代表29,089人、小選挙区28,966人(いずれも外務省の発表による)。
外務省は投票した人数を登録した人数で割って、投票率は小選挙区選挙が28.02%、比例代表選挙が28.14%と発表した。しかし、海外有権者の総数で割れば投票率は3%前後に過ぎない。
在外投票権の登録手続きが煩雑で時間がかかる。郵便投票をするには日本と現地の間で郵便を往復させる必要がある。日本大使館、総領事館等で投票しようにも距離が遠くて出向けない。在外投票制度には多くの問題があり、在外邦人の参政権は保障されていない。
障害者にも同様に参政権の保障がない。横浜市は2024年に「要介護認定を受けている方及び障害のある方の投票状況調査」の結果を公表した。2023年の横浜市議会議員選挙について、全有権者の投票率が42.83%だったのに対して、介護を受けている人では24.27%、知的障害者は27.53%、身体障害者は36.51%、精神障害者は36.66%だった。介護の程度、障害の程度が重い層ほど投票率が下がる傾向も見出されている。
日本障害者協議会は2025年に総務大臣に対して「障害者の投票等に関する要請書」を提出した。現行の紙投票制度の改善を求める要請書であるが、その中には「情報のアクセシビリティ確保」として、点字・音声・拡大文字やアクセシブルな電子版などの選挙情報を選挙公報として位置づけるように、すべての政見放送などに国の責任で手話通訳・字幕等を配置するように、といった具体的な提案が書かれている。
加えて、知的障害や発達障害のある人に対し、フリガナやわかりやすい選挙公報の発行・送付とともに、投票所の記載台前に候補者の写真を提示するなど合理的配慮をするよう周知徹底することも要請されている。
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情報通信政策フォーラム(ICPF)では、ネット時代の国政選挙について連続セミナーを開催している。第三回は「当事者に聞く:ネット時代の国政選挙」を5月29日に開催する。どうぞ、当事者の生の声に耳を傾けていただきたい。







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