たびたび歴史トリビアで申し訳ないが、天皇の家族が養子で分断されるというと「皇族に人権はない」という反論が出てくる。これは明治憲法の発想を新憲法に持ち込むものだ。
外務省は国連の女性差別撤廃委員会(CEDAW)が「男系男子に皇位継承を限る皇室典範は女性差別だ」として改正を勧告したことへの対抗措置として、同委員会への日本の任意拠出金を打ち切った。
CEDAWは2024年の勧告の中で、男女平等のために王位継承法を改正した他国の事例を参照し、皇室典範を改正するよう求めたが、外務省は直後に抗議。さらに国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)への拠出金の使途からCEDAWを除外した。
この問題についての政府の考え方は、安倍政権のときの第1次勧告から一貫して「皇位につく資格は基本的人権に含まれないので、皇位継承資格が男系男子に限定されていても差別には該当しない」という立場である。
これは現在の法解釈としては正しいが、皇室典範を改正しない理由にはならない。明治22年に決まった皇室典範の草案では、天皇を男子に限るという規定はなかった。過去に女帝はいたからだ。ところが法制局長官だった井上毅は、これに強く反対した。
欧羅巴(ヨーロッパ)ならば源姓と称へながら源姓の人も女系の縁にて皇位を継ぐこと当然なりとあきらむるなり。欧羅巴の女帝の説を採用して我が典憲とせんとならば、序にて姓を易ふることをも採用あるべきか、最も恐ろしきことに思はるるなり。
儒教主義者の井上は「男尊女卑」を公言し、女性を政治から排除すべきだと主張した。そのため、女帝に継承すると「易姓革命」が起こると主張したのだが、これは奇妙な論理である。歴史上には8人10代の女帝がいるが、そのとき王朝が代わったわけではない。中国の皇帝には姓があるが、天皇には姓がないからだ。
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