イオンモールおじさんは「浮気をしない良い夫」

黒坂岳央です。

先日、イオンモールを歩く中年男性の服装を「ダサい」と晒した投稿が炎上した。筆者自身がそのイオンモールおじさん当事者であることは以前の記事で書いた通りだ。また、集英社さんからのインタビューに回答もさせて頂いた。

世間の関心が高いイオンモールおじさんだが、実は肯定的な意見もある。「家庭を大事にして浮気しなさそう」という声だ。

実際、これは正しい。自分自身がイオンモールおじさんだが、浮気など本当に一瞬たりともしようと思ったことがない人間なので語る資格があるはずだ。持論を展開したい。

浮気する男の条件にことごとく該当しない

当然ながら「イオンモールおじさんは浮気をするか?」という統計はないわけだが、「浮気をする男性の特徴」はある程度データが揃っている。心理学研究が繰り返し示しているのは以下の組み合わせだ。

  • 承認欲求・ナルシシズムが強い。
  • 衝動性が高く自己統制能力が低い。
  • 刺激や新鮮さを常に求める。
  • パートナーへのコミットメントが低い。
  • 浮気できる機会と環境がある。

こうしたものである。逆に言えば、この条件を構造的に欠いている人間は浮気率が下がる。そしてイオンモールおじさんはこの条件を全部外している。

まずは承認欲求、ナルシシズムについて。浮気の強いリスク要因は「異性から常にすごい・かっこいいと言われたい」承認欲求だ。しかしイオンモールおじさんはモテ市場から自発的に退出している。本当に異性にモテたいなら、ナンパな街へ一人で繰り出すはずだ。

そしてイオンモールおじさんは失えないものを多く抱えている。住宅ローンを払い、子供の教育費を積み立て、家族の生活を維持している。そのような人間は、長期的な自己統制が習慣化している。

衝動性が高い人間にこうしたことはできない。浮気する男の特徴として「酒・ギャンブル・浪費など他の衝動的行動も多い」というパターンがあるが、イオンモールおじさんの行動様式とは真逆だ。

そして浮気の機会もない。浮気には時間・お金・出会いの場の3つが必要だ。子育て世帯の父親は可処分時間がほぼない。可処分所得は教育費と住宅ローンに消え、週末の行動範囲はイオンモールだ。「浮気するチャンスは皆無」である。

最後に刺激追求について。研究によれば浮気は性欲よりも「スリル・征服欲・まだモテるという確認」といった刺激追求の性格が影響する。イオンモールおじさんが求めているのは刺激ではなく生活と心の安定だ。フードコートで子供と一緒にラーメンを食べて満足できる人間が、リスクとコストの塊である浮気に走る理由がない。

イオンモールおじさんはダサさを許容する

興味深いことに「イケメン・高収入・社交的」という属性は必ずしも浮気の因子ではない。確かにこうしたパラメータは「浮気の機会」を増やすものの、決定的因子ではないことが心理学研究で繰り返し示されている。

学校の保護者やイオンモールを歩くおじさんの中には、男の自分から見ても「うわ、すごいイケメンだな!」とハッとするようなカッコいいパパもいる。だが、そうしたパパが学童へ子供を迎えに行き、イオンモールのトイザらスで子供とおもちゃを選んでいるものである。

逆もまた然りだ。外見への投資をやめ、社交的な場から離れ、家族との時間に可処分資源を全振りしている人間は、機会の面でも動機の面でも浮気から遠ざかる。

ダサい服で歩いているおじさんが、実は最も家庭に忠実な属性かもしれない。

「モテる、カッコいい」というパラメータは結婚したらどうでもよくなる。まったくないよりある方がマシという程度で、すでに家庭を持った後は「家族を大事にする」「仕事で結果を出す」ということに比べれば些末なものだ。

そして家庭や仕事にコミットしている男性ほど、外見に気を使わなくなりやすい。先日、医師や社長をやっている保護者たちと運動会で挨拶をしたが、彼らはまるで部屋着のような姿で応援に来ていた。そのままイオンモールを歩けば、「ダサい」と言われてしまいそうな格好である。恋人としてダサい男ほど、実は夫としては悪くないのではないだろうか。

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なめてくるバカを黙らせる技術」(著:黒坂岳央)

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働き方・キャリア・AI時代の生き方を語る著者・解説者
著書4冊/英語系YouTuber登録者5万人。TBS『THE TIME』など各種メディアで、働き方・キャリア戦略・英語学習・AI時代の社会変化を分かりやすく解説。

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